本格(乙類)焼酎に比べスッキリとしてクセのない味わいが特徴で、ホッピーや酎ハイなどの割り材と相性が良い「甲類焼酎」。その販売量が、東日本と西日本では「圧倒的」に違うこと、ご存じだろうか。
「大五郎」で知られるアサヒビール(東京・墨田区)の広報担当者によれば、「弊社の甲類焼酎の売上のうち、約85%が東日本です」。また、「宝焼酎」の宝ホールディングス(京都市)でも、甲類焼酎の売上は「8:2」で東日本が多いという。なぜ、ここまで売上に大きな差が出ているのだろうか。J-CASTニュースが探ってみると......。
販売量は「西に向かって減っていく」
甲類焼酎とは、糖蜜などの原料を何度も蒸留し、雑味の無い高純度のアルコールを精製して作ったもの。低コストによる大量生産が可能なため、本格焼酎と比べて基本的に安く販売される。2リットル、4リットルの大容量ペットボトルでもお馴染みで、「家計に優しいお酒」とのイメージが強い。
芋や麦など原料の風味が強い本格焼酎よりもクセのない飲み口で、サワーや酎ハイなど様々な割り材との相性もピッタリ。カロリーも少なく、糖質やプリン体も含まれていないことから、ここ最近の「健康ブーム」の面からも注目を集めている。
そんな甲類焼酎について、J-CASTニュースが2017年7月13日に大手メーカー3社に販売動向を聞くと、どの担当者も「西日本よりも、東日本で売れています」と口を揃える。アサヒビールの担当者は、
「ここ数年の売上傾向で、ざっくりした数字ではありますが、弊社の甲類焼酎の売上は、約85%が東日本です」
と話す。また、宝ホールディングスの担当者は、
「愛知までを東日本と区分すると、売り上げの比率は単純計算で8対2で東日本が多くなります」
と説明。また、甲類焼酎で知られるある酒造メーカーの担当者は、「うちの場合、甲類焼酎は北海道や東北地方で売れていて、そこから西に向かってグラデーションのように徐々に減っていきます」としていた。
東日本で「甲類」が売れるワケ
話を聞いた3社は、いずれも全国で甲類焼酎を展開している。にも関わらず、なぜここまで販売量に差がつくのか。
焼酎の歴史や販売動向に詳しいある業界関係者は取材に対し、
「理由はさまざまですが、一つに、物流の関係で昔は関東には本格焼酎があまり入って来なかった点があります。そこで関東では、ホッピーや酎ハイなど甲類焼酎を使った『割り材文化』が流行したんです」
と話す。一方で、地理的な面で早くから本格焼酎に親しんでいた関西では、「一昔前までは、麦の本格焼酎で酎ハイを作っていた」という。
また、宝ホールディングスの担当者は「あくまで一説ですが」と前置きした上で、
「宝焼酎をはじめとした甲類焼酎は古くから、関東の市場で圧倒的な人気を集めていました。大正から昭和初期ぐらいまでの東京は、東北地方から『出稼ぎ』のために多くの人が集まっていました。その東北出身者が、関東で飲んだ甲類焼酎を地元に持ち帰ったことから、関東を中心に広く東日本で飲まれるようになったと推測できます」
と説明。一方で、関西は九州や中国地方から人が集まってきたため、本格焼酎が定着したのではないかと推測。その上で、
「そもそも、関西には伏見や灘など日本酒どころが多く、基本的には地の日本酒が良く飲まれていました。こうした理由から、関西では甲類焼酎が定着するまでに時間がかかっていて、そうした文化の差が、現在の販売量にも繋がっているのではないでしょうか」
としていた。