2017年7月1日インド北部に位置するピリビートという町で、地元の農民が保護区から出てきた野生のトラに襲われて死亡したというニュースがインドで話題になっている。
注目されたのは襲われた理由だ。実はわざと保護区内に入りトラに襲われることで政府から補償金を受け取ろうとしたのではないか、という疑惑が持ち上がっているからだ。
約86万円の補償金目当て?
2017年7月2日付のインドの英字新聞「Hindustan Times」電子版によると、ピリビートは今年だけでも7人、そのうち3人は6月16日から2017年7月1日までのわずか2週間のうちにトラの犠牲になっている、インド国内でもトラの生息数が最も多い地域だという。
特別自然が豊かというわけではなく2014年にトラの保護区が設けられたためで、数が増えたトラが保護区外にも出没するようになり、人と接触してしまう機会が増加しているのだ。近隣にも同様の保護区があるため、保護区間を移動するトラも少なくない。
「Hindustan Times」は保護区に指定されたエリアはもともと貧しい小規模農家が耕作地として使用していたエリアが含まれていると指摘。保護区に指定されてからは一般人の立ち入りが禁止され、農家はやむを得ず保護区に近い場所で耕作を行っている。保護区とこうした人の居住地との緩衝エリアは10メートルほどの幅しかないという。7月1日に死亡した55歳の女性もこうした貧しい農家で、自身のサトウキビ畑で発見された。
保護区外でトラに襲われた場合、政府から最大で7700ドル(約86万円)の補償金が遺族に支払われる。その調査過程で奇妙な事実がわかった。実は前述の女性が見つかった畑に保護区からトラクターが移動してきた痕跡があったのだ。
さらに、女性の衣服の断片も保護区内で見つかり、実は女性が保護区に侵入して襲われその後保護区外に運び出されていたことが明らかになったのだ。米ニューヨーク・タイムズ紙の7月5日付の記事の中で州政府の担当者は、「補償金を詐取しようとした行為だ」とし、他の事件も疑わしい点があるため補償金支払いを拒否したことを明らかにしている。
さらにインドのネットメディア「FIRSTPOST」は中央政府の捜査機関関係者の、
「農民たちが住む村が村ぐるみで補償金を詐取するため、同意した年寄りをわざと保護区に行かせてトラに襲わせている可能性がある。遺族が補償金を受け取ったら村人全員で分配しているのだ」
という衝撃的なコメントを掲載。「このままでは人為的に大量の人食いトラが作り出されてしまう」と危機感を募らせている。地元の農家もこう語っている。
「農業ではほとんど収入にならないし、他の仕事もない。何とかして現金が必要になったら老人は意図的に保護区に行こうとする」