労働者の代表を自任してきた連合、日本労働組合総連合会が条件付きながら、時給管理を外す「高度プロフェッショナル制度」の導入の賛成に舵を切ったことが話題となっている。
2017年7月19日夜には、方針転換に反対する労働者らが東京・千代田区にある連合本部で、異例の抗議デモを行った。
労務に厳しいコンプライアンス・チェック
整理しておくと、連合の賛成した「高度プロフェッショナル(高プロ)制度」の対象は、「年収1075万円以上のアナリストや為替ディーラーなどの専門職で、「年間104日以上の休日確保」という極めて限定的なものなので、大騒ぎするようなものではない。
7月19日夜、連合の方針転換に反対する労働者が、連合本部の周囲でデモまでやったそうだが、むしろ、本当に残業時間を減らし生産性を上げたかったら、ハードルをもっと下げてホワイトカラーの対象をもっと広げるべき。筆者が常々言っているように、成果を時間で測れないホワイトカラーに時給で払っていることこそ、日本の長時間労働の根幹だからだ。
とはいえ、これまで反対一辺倒だった連合が、条件付きながら脱・時間給を認める方向に舵を切った事実は大きい。その背景には何があるのか――。
2016年あたりから、日本中の会社で労務関連の厳しいコンプライアンス・チェックが行われている。大手広告代理店、電通の過労死問題をきっかけに、企業の労務管理に厳しい目が向けられるようになったことが原因だ。
とくに知名度の高い大手企業ほど厳しく見直しが行われ、「残業は月50時間まで」という具合に、自主的に厳しい上限を設ける企業は少なくない。
しかし、この動きは結果的に、それまで残業代にどっぷり依存してきた労組自身の首を絞めることとなった。
労働時間に固執してきた連合の「自業自得」
当たり前の話だが、会社がホワイトカラーの従業員一人あたりに払える賃金は労働時間によらず、だいたい決まっているから、働いた時間に応じて払うのであれば、基本給ほかを抑えつつ、残業代用の資金をプールしておかねばならない。その残業代の部分が減ったのだから、これが実質的な賃金カットになったというわけだ。
そして、それはこれまで頑なに「ホワイトカラーであっても席に座っていた時間に応じて時給を支払われるべきだ」と、労働時間に固執してきた連合の「自業自得」である。「高プロ」制度をめぐる連合の方針転換は、その現実を遅まきながら、連合自身がようやく認めたということだろう。
ちなみに、政労使のあいだで月100時間を軸に議論が続けられている「残業時間の上限」については、筆者は思い切って「残業上限月50時間」くらいにするのがいいと考えている。
そうなると残業代を当てにしている組合員は、生活が維持できなくなるだろうから、連合はイヤでも「時間ではなく成果で評価する仕組み」を導入せざるを得なくなるし、その対象も大きく拡大されることだろう。
もちろん、過労死も激減するはずだ。
というわけで、連合をさらにやる気にさせるためにも、「残業カット=残業代カット」の流れをどんどん後押しするべきだ。
(人事コンサルタント・城繁幸)