家庭で料理に使うような身近な食材でも、過剰摂取すれば中毒症状を起こす危険性があるものは少なくない。最近では認可外保育園の経営者が乳児に食塩を与えて中毒を起こし、死亡させたことが話題となった。
食塩ほど常用されるものではないが、スパイスのひとつ「ナツメグ」にも中毒リスクがあり、さらには「精神症状の発現」、いわゆるトリップしてしまう可能性もあることを知っているだろうか。
茶さじ数杯でバッドトリップ
料理好きにとってはナツメグといえば肉料理に欠かせないスパイスのひとつだ。しかし、「ナツメグを大量に摂取するとトリップできる」という話は合法ドラッグなどに絡めてアングラネタとして語られることが少なくない。
大学医療情報ネットワークサービスのサイト上に掲載されている「中毒情報データベース」によると、ナツメグには幻覚誘発作用をもつ物質へ代謝される「ミリスチン」「エレミシン」という成分を含んでおり、成人で5グラム以上摂取すると精神症状を発現すると解説されている。
大学生のころに興味本位でナツメグのパウダーを食べたことがあるという30代の男性は、J-CASTヘルスケアの取材に対し「最悪の経験だった」と答え、こう続けた。
「当時ネットか何かでナツメグでトリップできるという情報を目にして、興味本位でティースプーン5~6杯程度のナツメグパウダーを食べました。数時間経ってからものすごい脱力感とめまいのようなだるいような何とも言えない遊離感が襲ってきて、バッドトリップを半日近く感じていました。ともかく最悪です」
この男性の場合は気持ち悪かった程度で済んだようだが、ナツメグの大量摂取はかなり危険だ。
日本中毒情報センターの「ナツメグの中毒情報」によると8歳の男児が未加工のナツメグの実を2個食べたところ24時間後に死亡した例や、パウダーのナツメグを10グラム摂取した22歳の男性が夜間呼吸困難に陥り緊急搬送された例なども紹介。
同センターはナツメグパウダー5~15グラムを経口摂取すると1~8時間で激しい動悸や胸部の痛み、ショック状態、呼吸困難、めまい、興奮、多幸感、幻覚などの症状に襲われると注意を促している。
大量摂取したら速やかに医療機関へ
しかし、一般的には神経症状があることや中毒を起こす可能性があることは意外に知られていないようだ。2017年7月13日にはフリーの役者・歌手だという女性が自身のブログでカレーに1瓶15グラムのナツメグをすべて入れて半分ほど食べたところ、意識がもうろうとする状態になり、自力で何とか救急車を呼び緊急入院したと報告していた。
大量摂取してしまった場合、可能な限り早く医療機関を受診するのが最善の手だ。中毒情報センターは、
「成人5グラム以上摂取の可能性がある場合、精神症状を示す恐れがあるので受診」
としており、子どもの場合は少量摂取であっても異常らしき症状が見られる場合は受診するようすすめている。また、可能であれば自宅であらかじめ摂取したナツメグを排出できるよう催吐も推奨されていた。