「眠りたいなら逆にカラダを熱くしろ!」
古賀教授「睡眠不足になると、肥満や美容面のデメリットだけでなく、糖尿病や高血圧、がんのリスクも上がります。あらゆる体の不調のもとです」
それでは、この暑い夏、どうすればよく眠ることができるだろうか。実は、人間は寝る時にカラダの中心部の体温を下げないと深い眠りに入っていけない。そのために必要なのが放熱だ。手足や表面の皮膚から熱を外に出すことによってカラダの中心部の温度が冷える。そもそも体温よりも周りの気温がずっと低ければ体温は簡単に下がる。しかし、気温が高い夏は当然下がりにくい。夏になると寝苦しくなるのはそのためだ。
では、どうしたらよいのか。そこで有効なのが眠りの新常識。MCの後藤が「眠りたいなら逆にカラダを熱くしろ!」と強調した。表面の体温を周りの気温より上げてしまえば、皮膚から放熱して中心部の体温が下がるという逆転の発想だ。体温を急に上げるには風呂に入るのが一番だという。
秋田大学で理学療法を教える上村佐知子准教授は「入浴、特に温泉がいいです。体温を上げて眠りをよりスムーズにし、熟眠に誘います」と語った。その効果のほどを上村准教授が実験で見せた。風呂の入り方による睡眠の質の違いを4人の学生で調べた。1人目は天然の温泉成分に近い塩化物泉に入った。2人目は炭酸を多く入れた風呂。皮膚に細かな泡がつくのが特徴。3人目は水道水を湧かした家庭にある風呂。4人目は風呂に入らない。
風呂はぬるめの39度。時間15分の半身浴。風呂から出て、4人には同じ部屋で寝てもらい、脳波や体温を測って眠りの深さを割り出した。その結果、もっとも眠りの質が悪いのは風呂に入っていない人。家庭の水道水の風呂に入った人は、それに比べて深い眠りが約20%増えた。そして残り2つの風呂に入った人は約30%増の深い眠りを実現した。家庭用風呂より温まったからだ。
上村准教授「夏だからとシャワーで入浴を済ませるのは、実は損な話です。しっかり浴槽に入って入浴をした方が、むしろ涼しく寝やすい夜を過ごせるのです。寝る2時間前に入浴するのがコツです」
さらにオススメの快眠術は「朝食」だ。体内時計の観点から食事と睡眠を研究している産業技術総合研究所の大石勝隆グループ長が、マウスを使った実験を見せた。マウスを2つのグループに分け、片方は朝食を抜き、片方はいつでもエサが食べられる状態にして2週間、昼間の活動を比べた。すると朝食抜きマウスは寝ぼけている状態が続き、活発な活動が見られなかった。脳波を調べると、朝食抜きマウスがしっかり覚せいしている時間は3割も少なかった。
大石グループ長「最近、私たちのカラダに時計の役割をする遺伝子が発見され、それがカラダ全体の様々な働きをコントロールしていることがわかりました。私たちの体温は24時間サイクルで変動します。朝しっかり食事をして体温を上げると、夜には体温は下がり、眠りやすくなります。ところが、朝食を抜くと体温を上げきれなくなり、リズムが狂って、夜寝ている時に体温が上がってしまうのです」