「プエラリア・ミリフィカ」というマメ科の植物がある。タイやミャンマーに分布し、日本ではサプリメントでその名を知る人もいるだろう。
特に「バストアップ」をうたった健康食品に使われているが、摂取により効果が出るどころか体調を崩したとのトラブルが近年増加している。国民生活センターは2017年7月13日、注意喚起を出した。
「豊胸によい」有効性の十分な情報はない
プエラリア・ミリフィカを含む健康食品について国民生活センターに寄せられた被害情報は、2015年に97件と前年の13件から急増。16年も94件と「高止まり」したままだ。服用・摂取により腹痛や下痢、じんましんといった消化器や皮膚の障害が多い。
そもそも、どんな健康食品なのか。プエラリア・ミリフィカ入りのサプリは、インターネット通販で簡単に購入できる。「女性らしく美しいラインを保ちたい」、「いつまでもきれいでいたい」といったアピール内容とともに、「バストアップ」という言葉が並ぶ。物販サイトのなかには、「バストアップサプリ」とはっきり銘打ってプエラリア・ミリフィカを勧めているものもあった。価格は数百円から2万円を超えるものまで幅広い。
ところが、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報にはこう書かれている。
「プエラリア・ミリフィカの塊根は若返りの民間薬として知られており、サプリメントや化粧品などに利用されている。俗に、『豊胸によい』『肌によい』「若返りによい』『強壮によい』『不妊によい』『更年期によい』『骨粗鬆症や高脂血症によい』などと言われているが、ヒトにおける有効性については、十分な情報は見当たらない」
一方でプエラリア・ミリフィカには、デオキシミロエストロールやミロエストロールといった成分が含まれ、女性ホルモンのひとつ「エストロゲン」と同じ働きをする。医薬基盤・健康・栄養研究所によると、デオキシミロエストロールやミロエストロールが多量に含まれる製品の利用で、「重篤な有害事象を受ける可能性を示唆している」という。
特定の部位に作用すると答えた販売者ゼロ
国民生活センターが紹介している具体的な被害事例は、以下のようなものがある(発表資料より抜粋)。
「通信販売で女性らしい体型になるという健康食品を定期購入し、初回分を飲んでいると大量の不正出血が起こった。この健康食品が原因とは思わずに飲み続けていたが、病院に行くと、子宮内膜が厚くなっているとのことで、健康食品との因果関係は分からないが飲まないよう言われた」(30歳代女性)
「高校生の娘がモデルのブログを見て、バストアップやダイエットのサプリメントに興味を持ち、定期購入で契約......生理が2か月も遅れていて心配」(10歳代女性)
「バストUP とスリムUP を同時にかなえるというサプリを定期購入したところ、全部飲み終わらないうちにバストに発疹が出てきた。医者の治療を受けたが、ホルモンが増え乳腺症が起きているので飲用を止めるよう指示された」(20歳代女性)
同センターでは、プエラリア・ミリフィカの健康食品12銘柄を実際にテスト。この中で10銘柄にエストロゲンと同じ作用が見られ、うち3銘柄からは1日最大摂取目安量が身体に作用を及ぼす可能性があると考えられるほどの量のデオキシミロエストロールとミロエストロールが検出された。
製品を販売する12社を対象にアンケートを実施したところ、5社から回答があった。興味深いのは、「各銘柄はどの部分に作用するものか」に対する答えだ。4社が「特定の部位への作用はない」、1 社が「分からない」とし、「具体的に特定の部位に作用するという回答をした販売者はありませんでした」という結果。実はテストした12銘柄中11銘柄の、「ほとんどの銘柄の商品パッケージ等や販売者のウェブサイトでバストアップを示唆するような写真やイラスト、モニター等の体験記や口コミが記載されていました」。摂取するだけで豊胸や痩身が可能と受け取れる記載も見つかり、「医薬品医療機器等法、健康増進法、または景品表示法に抵触するおそれ」があるという。
製品テストの対象となったすべての販売者ではないとはいえ、バストアップを強調しながら、明確に特定の部位に作用するとはどこも答えられなかったわけだ