小泉進次郎氏はどう出る? JA全中の新会長に「守旧派」

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「農業改革は必要」

   中家氏は7月5日に和歌山市で開いた記者会見で「農業改革は必要」と語り、奥野路線から急激な路線転換を進めない考えを示した。今回の会長選に臨むにあたって「政府の不当な介入には毅然とした態度で臨む」と述べていたが、ひとまず矛を収めた格好だ。そのうえで「自己改革をするために地域のJAで改革がどの程度進んでいるのか確認するところからスタートしたい」との方針を示し、「農家や地域にとって存在感のある組織を目指したい」と話した。

   そうは言っても中家氏の会長就任によって、農業改革が進むと見る向きは少ない。奥野氏と小泉氏が協調したこの2年間でさえ、自民党農林族らによる「骨抜き」が避けられなかったからだ。

   例えば、2016年11月に政府・与党がまとめた「農業競争力強化プログラム」は、政府の規制改革会議の改革案をことごとく退けることに成功した。改革会議は「1年以内」と時間を区切り、全国農業協同組合連合会(JA全農)は価格が高止まりして農家の負担が重くなっている農業資材の販売から手を引き、どこから資材を購入したらよいかなどをアドバイスする組織に衣替えすることを提案。また、信用(金融)事業を営む地域農協の数を「3年後を目途に半減させるべき」とも指摘した。これらの改革に進展が見られない場合は「第二全農」の設立を進める措置を政府に求めた。

   しかし、全農の資材の取り扱いについては自主的な改革を要請するにとどまり、農協金融の圧縮は消え去った。全農や地域農協がかかわることで国内の農業資材価格が隣の韓国に比べても高くなっていることを明らかにするなど小泉氏の動きに評価すべき点はあるが、万歳氏の辞任を招いた農協法改正に比べれば小粒と言わざるをえない。今後、改革派の奥野会長が退いた後に「昨年の農業競争力強化プログラムを超えるものが出てくるはずがない」(埼玉県の農協関係者)という見方が強い。足元では安倍政権の内閣支持率が急速に下がっている。改革を後押ししてきた首相官邸自体も、減ったとはいえ一定量はある農業票を意識して改革の速度を緩めようとする可能性もありそうだ。

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