三重県の観光地・伊勢志摩をPRすることを目的に作られた海女さんの萌えキャラ「碧志摩(あおしま)メグ」のアニメPVが2017年7月13日に公開された。ネット上では「まだ活動してた?」「消えてなかったのか?」といった声も上がることになった。
地元では16年5月の「伊勢志摩サミット」のおもてなし役としても期待されていたのだが、イラストの胸や、太ももが性を強調しているとし「女性蔑視」「海女を誤解される」といった批判が一部で起きて、志摩市はキャラクターの公認を撤回した。キャラクターそのものも廃止になりかねない勢いだったが、どっこい「メグ」は人気を拡大していたのだ。
「女性蔑視」と市の公認キャラを外された過去
13日に公開された「メグ」のアニメPVは15秒、45秒の2つのバージョンがあり、いずれも三重県の観光PRをしている。声優には「ガンダムビルドファイターズ」のイオリ・セイ役などで知られる、同じ三重県出身の小松未可子さんを起用した。
「メグ」の誕生は14年で、三重県出身で、地元企業株式会社マウスビーチMARIBON事業部の浜口喜博プロデューサーが当時ブームとなっていた萌えキャラ構想を市に提出し、当時の大口秀和市長が旗振り役となり10月30日に記者会見でイラストを公表、市の公認を発表するとともに名前を公募した。プロフィールは17歳で身長158センチ、体重46キロ、サラリーマンの家庭に生まれ育ち、名人のおばあちゃんのような日本一の海女になれるよう努力をしている、となっている。市は「メグ」のポスターを制作し観光PRを始めるとともに、「伊勢志摩サミット」のおもてなし役にしようと進めていたのだが、15年春ごろから「女性蔑視」「海女を誤解される」といった抗議のメールや文書が届いたほか、直接市役所を訪れて公認をやめるよう訴えられる事態になった。
市長はイラストの絵柄を変えてでも公認取り消しを断固拒む姿勢だったが、15年8月に現役の海女さん含む309人分の署名が市と市議会に提出され、9月30日に海女さんの代表24人と浜口プロデューサーらの話し合いの場が持たれた際に海女さんの約3割が取り消しを求めたことで、市は11月5日に公認を取り消した。
ネット上では当時、「なぜこれが女性蔑視になるのか分からない」という意見が多く、「けしからん」は少数派だった。公認取り消しについて「メグ」は「悲劇のキャラ」扱いされ、キャラそのものも抹殺されかねない勢いに、「メグ」自体の存在も風前の灯だと思う人が続出した。
ところがどっこい、「メグ」は消えるどころかその人気を拡大させていたのだ。
地元は観光客が訪れてかなりの盛況
J-CASTニュースが17年7月14日に浜口プロデューサーに取材したところ、
「市の公認から外れたのは残念なことですが、その結果、民間会社のキャラクターとなったメグは公認の縛りがなくなり、自由に活動させることができるようになったのです」
と語った。一連の騒動は逆に「実はカワイイキャラだった」として全国に知名度を広げることになり、「メグ」のキャラクターグッズや、「メグ」をパッケージにあしらった菓子類などを東海地方を中心に東京・秋葉原など全国にショップコーナーで販売。LINEのスタンプを続々登場させるなど大人気になっている。当の志摩市でも「メグ」関連のグッズを扱う店が軒を連ね、観光客が訪れかなりの盛況だと報道されている。宇賀多神社では「碧志摩メグ絵馬」やお守りが販売され「聖地巡礼」の場所になりつつある。市の観光協会は16年3月28日に伊勢志摩国立公園をPRする「メグ」の新作ポスター2種類、計1000枚を無料配布した。市の公認は外れたが「メグ」の制作会社・マウスビーチは協会の会員のため、地域の観光PRになるものについては他の会員と同様に協力関係を続けているのだという。
しかし、こうしたポスターを配布することに苦情はないのか。担当者は、
「公認を外されてからは、苦情や抗議のようなものは見受けられません。楽しんで頂けている姿ばかりが目につき、ポスターを配布する私たちを応援してくれている、そんな状況です」
と打ち明けた。
「女性差別と言っていたあの人たちは、どう思う?」
さて、今回の「メグ」のアニメPVだが、これはクラウドファンディングで資金を募った。16年11月22日に400万円を目標に始めたところ、10日ほど経った12月2日で達成した。トータルでは715万8000円が集まっている。これを機にテレビアニメ化を検討するのかというと、それ以上のプロジェクトを考案中のようなのだ。浜口プロデューサーはJ-CASTニュースの取材に対し、「メグ」はあくまで三重県をPRするためのキャラクターであることを強調したうえで、
「どのようなキャラクターに育てて行くのか、というイメージの中にあるのは『初音ミク』です」
との構想を語った。もちろん「ミク」はボーカロイドであり「メグ」とは全く異なるものだが、「ミク」はそのキャラクターと機能を使うことによって音楽や映像とのコラボや、自身のコンサートなどを行っている。「メグ」もやがては様々なジャンルとのコラボレーションを行ってその存在感を際立たせたいと考えているのだ。
今回のアニメPVが話題になり、久しぶりに「メグ」を見たという人が多くいて、
「まだ活動してた?」
「消えたんじゃなかったのか?」
という感想がもれたが、
「碧志摩メグさんの存在を支えてきて、ほんとに良かったと思った」
「意味不明な迫害受けながらも活動してたんだねぇ泣ける」
「女性からも好意的になってる現実に『碧志摩メグは女性差別』と言っていたあの人たちは、どう言うんだろうね?」
といった感想がツイッターや掲示板に出ている。