振り込め詐欺の捜査をめぐり、意外な形で「日中協力」の成果が出た。中国・福建省で、中国当局が日本人35人の身柄をいっせいに拘束したのだ。日本側が振り込め詐欺の容疑者について中国側に捜査協力を要請し、中国側が容疑者の居場所を特定、拘束につながった。
日中間に犯罪人引渡し条約は結ばれておらず、この35人の身柄が今後どうなるかは明らかではない。ただ、過去には中国で日本人が詐欺容疑で拘束され、国外退去処分後に警視庁が逮捕したケースもある。
警察庁が中国公安部に「被疑者の所在確認等の捜査協力」要請
35人の拘束は、日中両政府が相次いで記者会見で明らかにした。35人は、「かけ子」と呼ばれる、日本に電話をかけて金銭をだまし取る役割を担っていたとみられる。7~8年ほど前から「かけ子」の拠点が中国に移っていることが指摘されてきたが、これほど大規模な拘束劇は珍しい。中国外務省の耿爽報道官が7月12日の記者会見で
「6月30日、日本人35人が電気通信詐欺に関与した容疑で、中国警察に拘束された。中国側は日中領事協定に基づいて領事機関に通報した」
と発言。翌7月13日夕方には、菅義偉官房長官が記者会見で
「警察庁から中国公安部に対して、インターネットバンキングの不正送金事案の被疑者の所在確認等の捜査協力を要請していた。中国側が独自に捜査によって振り込め詐欺を行っている可能性のある犯罪グループを特定し、中国の国内法に基づいて所在確認を要請していた被疑者を含む35人の日本人を拘束した」
などと経緯を明らかにした。