患者数は成人の8人に1人の「新たな国民病」
投与の結果、Muse細胞は自ら腎臓に集積し、糸球体を構成する3種類の細胞へと自発的に分化していった。これにより腎機能の回復が期待できる。また、患者自身ではなくドナーから提供されたMuse細胞の使用が可能になると考えられる。
2017年7月12日放送の「報道ステーション」(テレビ朝日系)では、同日に行われた研究発表の映像を流した。この席で出澤教授は、「点滴で臓器を移植する。血管に入れただけで腎臓に集積をして、細胞に自分から分化していってくれる」とMuse細胞の可能性について言及した。実際に点滴による再生医療が実現すれば、全国の一般病院で治療を受けられる未来が開ける。
日本最大の腎臓病患者の会とされる「全国腎臓病協議会」ウェブサイトによると、慢性腎臓病は生活習慣病やメタボリックシンドロームとも関連が深く、誰でもなりうる病気で、既に国内の患者数は1330万人。この数は、20歳以上の8人に1人に達する計算だ。「新たな国民病」であり、根本的な治療法が確立しておらず、腎不全のような深刻な症状に進む恐れがある。Muse細胞の研究がさらに進めば、慢性腎臓病に悩まされる多くの患者に「吉報」が届く日が遠からず来るかもしれない。