景気判断は難しい局面に差し掛かっているようだ。政府は2017年6月の月例経済報告関係閣僚会議(22日)で、景気の基調判断を6カ月ぶりに上方修正。日銀の6月短観(全国企業短期経済観測調査、7月3日発表)も改善傾向を示している。
一方で、総務省の5月の家計調査速報(6月30日発表)では消費支出が1年3か月連続で、前年同月比マイナス(2016年2月が閏月だった影響を除くと実質1年9か月連続減)になるなど、好悪の判断がつきにくい状況なのだ。景気は良いのか悪いのか、良くなっていくのか悪くなっていくのか――。
6月の月例経済報告、半年ぶりに判断引き上げ
6月の月例経済報告は、景気全般についての基調判断を「緩やかな回復基調が続いている」とし、5月までの「一部に改善の遅れもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」から「一部に改善の遅れもみられる」を削除し、半年ぶりに判断を引き上げた。
項目別では、設備投資が5月までの「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直している」、住宅建設は「弱含んでいる」から「このところ横ばいとなっている」、公共投資も「底堅い動きとなっている」から「底堅さが増している」に、それぞれ判断を引き上げたが、最大の要因は個人消費だ。回復の遅れが指摘され、5月までは「総じてみれば持ち直しの動きが続いている」との表現だったが、6月は「緩やかに持ち直している」へと判断を引き上げた。自動車販売や旅行、外食が上向きで、直近では百貨店やスーパーなどの小売り統計も増勢基調が目立つとして、内閣府は「改善の持続性が確認できた」と説明した。好調な企業業績→雇用環境改善→消費拡大、という好循環になってきたという解釈だろう。
日銀短観も、景況感が「良い」との回答の割合から「悪い」との回答の割合を引いた割合「業況判断指数(DI)は、大企業と中小企業のそれぞれ製造業、非製造業の別でいずれも前回3月調査を上回り、全体ではプラス12と、2014年3月と並ぶリーマンショック後の最高を記録した。
ただ、個人消費については弱さを示す数字もある。6月家計調査は、2人以上の世帯が使ったのは28万3056円で、物価変動を除いた実質で、前年同月比0.1%減。15か月連続の減少は、現行の調査方式となった2001年1月以降では最長になる。
「社会保険料の増加などで可処分所得が増えない」
消費について、月例報告公表後の記者会見で石原伸晃・経済再生担当相は「(消費は)腰折れのリスクがある」と認めた。
政府が個人消費の判断に使う消費総合指数(内閣府)は上昇を始めているが、その上がり方は、バブル景気などの時と比べると極めて緩やか。この間、雇用者所得が「官製春闘」などもあってある程度増えているが、消費総合指数の伸び率は、所得の半分程度にとどまる。所得の伸びほど消費が増えていないということで、「社会保険料の増加などで可処分所得が増えない、あるいはむしろ減っているため、消費の足を引っ張っている」(エコノミスト)との指摘がある。
日本の景気を引っ張る柱の一つである海外経済にも不安がある。月例報告は景気の先行きについて、「海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある」という表現を維持した。米国を筆頭に海外経済の好調が日本の輸出や生産を押し上げてきているが、この状況が続くとは限らないと、政府自体が懸念しているということになる。
実際、景気拡大局面が約8年続く米国では、新車販売が減速するなど、変調の気配もある。中国も、秋の共産党大会までは無理をしてでも好況を維持するとみられるが、その後の景気息切れを懸念する声は根強い。米トランプ政権の対外通商政策の不透明感も相変わらずだ。
今のところ、日本経済がにわかに失速するような見方は少ないが、楽観もできない情勢となっている。