岩手県盛岡市で認可外保育施設を経営していた人物が、2015年8月に預かっていた1歳の乳児に食塩を混ぜた液体を飲ませて食塩中毒で死なせたとして、岩手県警が2017年7月11日に経営者を傷害致死の疑いで逮捕したという報道がインターネット上で話題になっている。
ごく微量の食塩でも乳児が中毒になり死亡することに驚く声が多いが、中には「熱中症対策で水分と塩分をというが、乳児はどうすればいいのか」という疑問も見られた。確かに気になる点ではある。
大人でも実は塩分必須ではない
日本中毒情報センターが公開している中毒情報には、食塩は必要不可欠な成分ではあるものの摂取量によっては嘔吐や下痢などの中毒症状を示し、場合によっては死亡することもあり、特に小児の誤飲に注意するよう記載されている。
食塩の場合、推定致死量は0.5~5グラム/キログラムで、中毒症状は0.5~1グラム/キログラムから発現するという。茶さじなどに軽くすくった状態を目安にすると、成人では1~2杯で中毒リスクがあることになる。成人よりもはるかに体重の軽い乳児であれば、さらに少ない量でも十分危険だ。
では、熱中症対策として水分や塩分を補給する場合はどうすればよいのか。そもそも暑い時期でも日常的な活動の範囲内であれば、塩分を余分に取る必要はない。日本気象協会の熱中症啓発を呼びかけるサイトでも、
「過度に塩分をとる必要はありませんが、毎日の食事を通してほどよく塩分をとりましょう」
と呼びかけている。炎天下の中、長時間屋外で働いていたりスポーツをするなど大量に汗をかく場合は塩分補給も行う必要があるが、暑いからといって水と塩分を同時に摂らなければいけないわけではない。
さらに、環境省が公開している「日常生活における熱中症 子どもと高齢者の熱中症予防策」では、乳児や小児は発汗機能が非常に低く、成人とは体温調節の仕組み自体が異なると指摘。
子どもは汗っかきというイメージもあるが、実際には発汗量は成人の半分程度で、汗をかくよりも皮膚からの放熱で体温を下げるというのだ。そのため、水分補給は当然だが、環境温度が高い場合に放熱できなくなり体内に熱が蓄積されてしまうため、涼しい環境にいることが重要だという。乳児に熱中症対策として水分に加えて日常的に塩分を摂らせる必要はないのだ。