5年後をめどに「革新的ながん医療システムの開発」
AIを応用した「日本発」のがん研究は、ほかのがんの分野でも進展が期待される。AI開発の新興企業「プリファード・ネットワークス」(本社・東京)の西川徹CEO(最高経営責任者)は、2017年1月26日、米サンフランシスコで開かれた「ディープラーニング・サミット2017」でのプレゼンテーションで、国立がん研と共同で、「深層学習(ディープラーニング)」を活用した新たな国家プロジェクトを開始したことを明らかにした。大量の医療データを用いた「初めてで、おそらく最大の」がん研究になるという。
今日、乳がん検診で一般的に行われるマンモグラフィーでは、発見の精度は80%。細胞を注射器などで取り出してがんの有無を調べる液状細胞診では90%だという。西川氏はプレゼンで、液状細胞診にディープラーニングを使った技術を組み合わせた検査により、99%まで精度を向上させることが可能だと話した。
国立がん研究センターの2016年11月29日付発表によると、このプロジェクトは乳がんだけでなく、「統合的がん医療システム開発」がテーマだ。同センターには、罹患者の詳細な臨床情報をはじめ、ゲノムや血液、画像情報といった「マルチオミックスデータ」が膨大に蓄積されており、これらを疫学データや文献情報とともにプリファード・ネットワークスの技術を用いて統合的に解析する。「日本人のがん罹患者個々人に最適化された医療の提供を目指した革新的ながん医療システムの開発」を目的とし、5年後をめどに実用化を目指すという。また2017年1月28日付の日本経済新聞電子版によると、「数十種類のガン種に応用できるメドが立っており」「わずかな血液を採取するだけで従来より安く、各段に高い精度の検査が可能になるという」。