がんは人類の「憎き敵」だ。一方で現代では、がんは「不治の病」ではなく、早期発見と適切な治療により命を救えるケースが増えている。
強い味方も現れた。人工知能(AI)だ。国立がん研究センターでは、大腸がんの内視鏡検査にAIを使って、高い精度でがんを見つけ出すシステムを開発した。
内視鏡検査を受けながら「見逃し」も
このシステムは、大腸の内視鏡検査時に撮影される画像で、大腸がんやがんになる前の病変をリアルタイムに検知し知らせる。国立がん研とNEC の2017年7月10日付の発表資料によると、約5000例の大腸がんと前がん病変の内視鏡画像をNECのAI技術に学習させた。この技術で、新たな内視鏡画像5000枚を解析したところ、前がん病変としてのポリープと早期がんの発見率は98%と、高い精度に達した。また検知と結果表示を約33ミリ秒以内と迅速化できた。
大腸がんは通常、前がん病変であるポリープから発生することが明らかになっている。ところが「肉眼での認識が困難な病変や発生部位、医師の技術格差により24%が見逃されているという報告もあります」。また内視鏡検査を受けながら後日大腸がんに進行することもあり、その原因として「内視鏡検査時の見逃し(58%)、来院しない(20%)、新規発生(13%)不十分な内視鏡治療による遺残(9%)」が挙げられている。AIによる発見率98%なら、検査での見落としが格段に減り、がんに進む前の段階で処置、治療に入れるケースが増えると期待される。技量や経験が不足している内視鏡医にとっては、万一肉眼で見逃した部位をAIが指摘すれば、改めて観察することが可能だ。
今回の成果は2017年10月の日本内視鏡学会総会で発表される予定。また7月10日のANNニュースによると、2年後の臨床試験スタートを目指している。