熱戦が続くテニスのウィンブルドン選手権だが、「コートが滑る」と出場選手が苦言を呈している。元世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)は「芝の状態が過去の大会と何か違う」と苦言を呈したほか、アリソン・リスケ(米国)は「まるで氷のようだ」との感想を述べた。
131回目の開催となる世界で最も伝統ある大会に、何が起きているのか。
「今日の芝生は何かが違った」
ウィンブルドンは4大大会唯一のグラスコート(芝)。もともと芝はハードコートなどと比べて滑りやすいとされているが、2017年大会は輪をかけて滑ると感じる選手が多いようだ。
7月9日付の豪州テレビ局「The ABC Board」によると、8日にセンターコートで3回戦を行ったジョコビッチは「今日の芝生は何かが違った。ベースラインの両側60センチメートルほどが少し柔らかかった」と述べている。さらに、同日ジョコビッチの後にセンターコートで試合したロジャー・フェデラー(スイス)は、「過去のウィンブルドンではこのような経験はしたことがない。滑るね。コート上で正確に動くのが難しくなればプレーしづらくなる。選手がけがをするのは決して見たくない」と話している。
実際、フェデラーと対戦したミーシャ・ズベレフ(ドイツ)は試合中に転倒しているほか、錦織圭が7日の3回戦で敗れたロベルト・バウティスタ・アグート(スペイン)も足を滑らせる場面が何度も見られた。
芝に足を取られて負傷した選手もいる。クリスティーナ・ムラデノビッチ(フランス)は6日の女子2回戦で、芝の状態の悪さからウォームアップ中に足首をひねった。7日付AFP通信でムラデノビッチは「ベースラインは非常に滑りやすくなっている。もう芝がない。もはやクレーでもない。コートサイドに巨大な穴があった」と荒れたコートに不満を述べている。この試合でムラデノビッチに勝利したリスケは、「コートはまるで氷のようだった」と滑りやすさを語っている。
「激しい熱が芝を焦がし、コートを滑りやすくした」
18番コートで戦ったムラデノビッチだが「他の多くのコートでプレーした選手も同様の悪影響を受けた」と、自身がプレーしたコートに限らない旨を7日付英紙「The Sun」で主張。さらに、コンディションが悪い原因について「激しい熱が芝を焦がし、コートを滑りやすくした」と推測し、これを大会主催者側も支持したとしている。フェデラーはこの考えに「高熱で芝の状態が悪化し、滑りやすくなる現象は知られている」としつつ、ムラデノビッチらの意見は受け止められるべきだと述べたという。
ちなみに現地時間の1日の観測では、最高気温が摂氏35.7度で、史上最も暑い大会といわれた。
ウィンブルドンに使用されるテニス競技場「オールイングランド・クラブ」の管理責任者であるニール・スタブリー氏は「各コートの管理は例年とまったく同じ水準で進められている」とし、「大会で試合を重ねるうちにベースラインが摩耗や傷みの徴候を見せるのは一般的なことだ」と主張。オールイングランド・クラブでは毎朝コートの固さの測定や、一定の水分量の維持といった管理を徹底していると伝えている。
また前出「The ABC Board」で同氏は、「7月3~8日の大会最初の6日間はほとんど雨が降らず、芝の摩耗につながった」と分析し、芝が強いストレスにさらされているのが原因のひとつだとの見方を示した。ただ、10日からの大会第2週目からは「問題はない」と試合がない9日に何らかの対策を打つことを示唆している。