保健・医療の根幹にあるのはヒューマニティー
桜田一洋理事(ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、理学博士)は、ただ健康なだけではなく「豊かな人生」に寄与する未来のヘルスケアサービスについて展望を述べる。
たとえばウェアラブルセンサーのようなデバイスを使った現行のサービスには「ノーマルな状態に向かうよう、競争心をあおる形で生活習慣をつくっていくものが多いです」とし、その問題点について「合理性、効率、競争、そういうものに当てはめた最後に、社会に溶け込めない『不機嫌な高齢者』をつくってしまったのでは意味がありません。1人1人の特性と状況にあった生活習慣をつくっていけるようにする必要があります」と指摘する。
「保健・医療の根幹にはヒューマニティー、人の多様性、人を大事にする気持ちがデザインされていないといけません。今までの医療の『エビデンス・ベース・メディスン』と呼ばれてきたやり方は、統計学的な『平均』が特徴でした。でも平均だから効かない人がたくさんいます。そこで、これにかわる『個別化』の推論技術をつくらないといけません。19世紀の医学博士・高木兼寛は『病気を診ずして病人を見よ』と言っています。個から入るのは医療の本質なのです」