政府が金融に強力な制御能力
銀行体系が国営を主としているため、政府は金融メカニズムに対して強力な制御能力を有している。中国の銀行業界には4000以上の法人が存在するが、トップに君臨する4大国営銀行(中国工商銀行、中国銀行、中国農業銀行、中国建設銀行)と国家開発銀行が銀行全体の総資産の約40%を保有している。これは政府が銀行間マーケットに柔軟性を持たせることに寄与し、そこに強力な制御メカニズムが生まれている。
このことは、第1には、商業銀行が取り付け騒ぎに遭遇するリスクを大きく引き下げることに寄与し、第2は、通貨市場で金融機関同士が相互に取り付けを行うリスクを大きく減じることに役立っている。歴史上、大規模な金融危機は第1の取り付け騒ぎに起因し、記憶に新しいリーマン・ショックは第2の原因による。中国金融体系の過渡期における特殊性は、これら異なる2種類の取り付けリスクの低減に役立っていると思われる。
欧米の市場経済国とは異なり、中国の債務総額は低くないが、純粋な民間部門の債務も多くはない。民間企業と家庭の債務の総和は債務全体の40%に満たない。言い換えれば、中国の債務の大半は広義の国営組織(政府と国営企業)内で発生し、政府に大きなやりくりの余裕を提供している。
たとえば、数年前に調査組織が地方融資機関のキャッシュ・フローを分析すると利息の支払いがショートしていたため、地方債務危機が発生するのではないかと予想された。その後、中国政府は地方政府の債務を中央政府の債務に置き換えて危機を回避した。この過程で、政府のやりくり能力と銀行体系に対するコントロールが徹底されたのである。こうした事態は、欧米の先進市場経済国ではあまり起こりえないことである。
上述のメカニズムは完全無欠とは言えず、資金効率も低下して浪費も目立つが、客観的に見れば危機の発生リスクを確かに低減させている。