「トマホークの性能は素晴らしい」
「日本は憲法を改正して軍隊を持つべき、というのがあなたの意見なのね?」
「そうだよ。日本は、普通の国として見なされる価値がある国だろう? 北朝鮮と戦うのに、日本の首相が米国の許可を取るのはおかしい。米軍関係者に日本人がレイプされるわ、米兵による凶悪犯罪でも日本の法律できちんと裁けないこともあったわで、日本人もうんざりしているはずだ」
男性はニューヨーク市ブロンクスで生まれ育った。コロンビア大学で物理学を学び、放射線技師として、海軍で5年間、その後、大学の研究所で6年間、働いていた。予算削減のために失業し、3年前に自動車修理工の職に就いた。
「ちょうど昨日、友人に話していたんだ。アメリカがシリアを攻撃したミサイルの開発チームに参加したかった、とね。『トマホーク』の性能は、素晴らしいよ」
2016年4月、内戦が続くシリアで、サリンとみられる化学兵器による攻撃で多数の死者が出たことを受け、トランプ政権がシリア政府軍の空軍基地に対して巡航ミサイルによる攻撃を行った。
「シリア攻撃は北朝鮮に対する見せしめだった。北朝鮮はしばらく、ミサイル発射などの挑発的な行動は慎むはずだ」
彼のこの予想は、外れた。
今年に入って11回目となる今回のミサイル発射は、米国防総省も大陸間弾道ミサイルと分析。対岸の火事ではなくなってきた。
(この項続く、随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
岡田光世(おかだ みつよ) 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計35万部を超え、2016年12月にシリーズ第7弾となる「ニューヨークの魔法の約束」を出版した。著書はほかに「アメリカの 家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。