車椅子の天才物理学者、スティーヴン・ホーキング博士がイギリスの公共放送BBCのインタビューで2017年7月2日、アメリカのトランプ大統領が先月初め、地球温暖化を阻止するための温暖化ガス削減を目指す「パリ協定」からの離脱を宣言したのを厳しく批判、国際的に大きな反響を呼んでいる。
地球は気温250度で酸性雨が降り注ぐ「金星化」する?
ホーキング博士は21歳で神経難病の筋萎縮性側索硬化症を発症し、余命2、3年と宣告された。その後、病気の進行が緩やかになり、車椅子生活で日常的な介助が必要なものの、パソコンを使った音声合成装置を使い、活発に研究活動を続けている。
今年75歳になったのを機にBBCのインタビューに応じ、「もっとも憂慮されるのは人類の将来」と語り、とりわけトランプ大統領のパリ協定離脱を強く批判した。
「地球温暖化はもう後戻りできない転換点に近づいている。トランプの行動は、気温250度、酸性雨が降り注ぐ金星のような高温の惑星へと地球を追いやるようなものだ」。
「気候変動は人類が直面する最大の危機のひとつだが、今、われわれが行動すれば避けることが可能だ。気候変動の証拠を否定し、パリ協定から離脱するというドナルド・トランプは、われわれと子孫に対し、美しい地球に本来、避けることの可能な環境破壊を招き、自然界を危険にさらす」。
国際的な専門家でつくる気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書は「地球の気候に後戻りできない変化を引き起こす転換点はまだ定かではないが、人間の活動と自然の変化があいまって気温上昇を招く危険性を増加させている」と指摘している。
博士は昨年もトランプ氏は「扇動家」と辛辣な批判
BBCのインタビューはイギリス国内だけでなく、海外でも大きな反響を呼んでいる。アメリカの有力雑誌タイムは内容を電子版で速報し、「博士は人類自身が環境問題を解決する可能性については悲観的で、人類が地球で過ごせる時間も限られるという見方をしている」と報じた。
最近のホーキング博士は地球外生命の探査に積極的で、2015年にはロシアの大富豪が出資する地球外生命探査計画にも、他の著名な科学者とともに参加の意志を表明している。
BBCのインタビューで博士は「人類は進化の過程で、強欲で攻撃的な性質の遺伝子が組み込まれたようだと恐れる。地上で争いが減る兆しはなく、軍事技術や大量破壊兵器の進展は争いを破滅的なものにする。人類が生き残るための最善の希望は宇宙に独立した移住地を作ることだ」と述べた。
博士はアメリカ大統領選のさなかの昨年5月の段階で、イギリスの民間テレビITVの番組で、「トランプ氏は共通の課題にもっとも関心が乏しいデマゴーグ(扇動家)だ」とこきおろしていた。
パリ協定離脱についてトランプ氏は記者会見で、「私は(アメリカの代表的な工業都市)ピッツバーグの市民を代表して大統領に選ばれた。パリ市民に選ばれたのではない」と発言し、顰蹙をかった。これを受けてピッツバーグとパリの市長が会見の数日後、ニューヨーク・タイムズ紙のオピニオン欄に連名で反論を寄せるなどアメリカの協定離脱は国際的な問題に発展している。