化粧の手順やテクニックなどを紹介するメイク動画が人気を集めている。動画サイトYouTubeには、メイク指南を専門としたYouTuberをはじめ、男女年齢問わず幅広い層の一般ユーザーから数多のメイク動画が投稿され、実際に真似しやすいこともあって、なかには何百万の視聴回数を誇る人気動画もある。
そんななか、小学生向けのメイクに特化した動画コンテンツを配信する「parfait tv」が登場した。「小学生が化粧なんて!」と批判的な大人も多いが、小学生を対象にしたのには理由がある。J-CASTニュースは2017年7月5日、サービスを運営するA-FLAG(東京・調布市)にその狙いを取材した。
中学3年生までに80%以上がメイクを経験
近年、メイクの低年齢化が進んでいる。小学生にも手の届く価格帯のコスメが多く展開され、ドラッグストアや100円ショップなどで気軽に購入することができるため、おこづかいでメイクやおしゃれを楽しむ子どもが少なくない。
ティーンズクロスメディア「JOL」と「電通ギャルラボ」が共同で実施した2012年の調査によると、小学6年生までに46%、中学3年生までには80%以上が化粧を経験しているという。情報番組「バイキング」(フジテレビ系)では、イマドキ女子小学生の79%がメイクを経験しているという特集を2014年に放送した。
しかし多くの大人が懸念するように、メイクは肌を痛めるなどの危険性もはらんでいる。ツイッターでも、
「え、今って小学生達メイクすんの...嘘でしょ」
「小学生はノーメイク!」
「今から化粧してたら、ゼッタイあとが怖いよ」
「小学生のうちからメイクして肌ボロボロにして楽しいかね」
など、小学生のメイクに驚きと批判的な声があがっている。
こういった非難があるにも関わらず、なぜ小学生を対象としたメイク動画の配信を開始したのか。A-FLAGの松田敬三代表取締役社長はその意図をこう説明する。
「小学生のうちに正しい方法を伝えることが、メイクを禁止するよりも良いと考えました。子供に携帯禁止するより携帯との付き合い方を教えるのと同じ考え方です。スポーツでも、箸の握り方でも同じように、なんでも最初が一番大切です。最初に正しい基本を学ぶことが大切なのはメイクも同じ。正しいメイク法を学べば肌も無駄に傷めません」
「子供向けのメイクチャンネルはない...」
「小学生の可愛いがいっぱい!」をテーマに、2017年6月からスタートした「parfait tv」では、メイクやファッションなどのトレンドを小学生モデルが発信する。メイクはプロが監修し、初心者にも分かりやすい内容になっている。正しいメイク術を公開することで、知識を身に付けてもらうことが目的だ。今後はメイクだけでなく、洗顔術などの肌のケアのハウツー動画も発信していく。
マーケティング専門コンサル「ジェイ・エム・アール生活総合研究所」の2013年の調査によると、化粧について教わったことがある小学生は約40%で、そのほとんどが母親を情報源としている。教わった内容は洗顔の仕方などが大多数だが、実際は可愛く見える化粧の仕方を知りたいと思う小学生が50%以上と多い。母親自身も子どもの化粧について関心が高いが、およそ半数が「正しい情報を知りたい」としている。
前出の松田社長は、
「大人向けのメイクチャンネルはありますが、子供向けはない。みんなやり方が分かっていないというのが、はじめた、大きなきっかけです。メイクする楽しさ!綺麗になる喜び!小学生にワクワクした毎日を過ごして欲しいです」
と、メイク動画開始の経緯を語る。大人の女性のたしなみともいうべきメイクの基本を正しく伝え、メイクを通じて綺麗になる楽しみを知ることで「子どもたちに元気になって欲しい!」という思いがあるという。
小学生をメインターゲットとしているため、小学生でも分かりやすい言葉の表現、スリーステップ構成でメイク初心者の小学生を迷わせないこと、短めな動画の尺など工夫は尽きない。
「目の『きわ』って表現で小学生は分かるか?小学生なのに『小悪魔メイク』の『小』悪魔って変??など、小学生と話し合い、試行錯誤しながら撮影しています」
今後は子ども向けコスメやファッションメーカーとのコラボも想定しているという。また、ファッションやコスメだけにとどまらず、ステーショナリーやおもちゃなど「可愛い」ものの紹介もしていく方針だ。