安倍政権は「経済統制」がお好き 酒の「官製値上げ」の行方 

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   酒類の安売りの規制が2017年6月から強化され、店頭のビール類が値上がりし始めた。スーパーなど大手量販店の過度の安売り競争から街の酒販店を守るという狙いとされるが、「官製値上げ」で晩酌の楽しみに影が差した。特に、スーパーなどの目玉商品として安売りの対象になることの多かったビール系飲料の値上げ、販売減が目立ち、需要の冷え込みを心配する声もある。

   今回の規制は2016年の通常国会で可決成立した改正酒税法などがこの6月1日から施行されたことによる。量販店、スーパーなどによる酒類の過剰な安売りの規制が目的で、仕入れ値に運送費や人件費などを加えた「総販売原価」を下回る価格で販売することが禁止された。改正法には、「公正な取引の基準」を定め、基準を守らない業者は業者名を公表、是正を求める命令などの罰則も盛り込まれている。

  • ビール系飲料の値段は向こうどうなる(画像はイメージです)
    ビール系飲料の値段は向こうどうなる(画像はイメージです)
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販売奨励金との関係

   この改正は、中小酒店の陳情を受け自民党の「街の酒屋さんを守る国会議員の会」を中心に、参院選前に議員立法で成立させた。また、「徴税の論理」を指摘する声もある。酒税はメーカーが出荷段階で納めるが、実際に負担するのは最終的に製品を買った消費者で、行き過ぎた安売りが小売りを傷めつけると税収に響きかねないという懸念は常に財務省・国税庁が持っている。

   小売り現場の実情のポイントは、メーカーや卸売会社が小売店に払ってきた「販売奨励金」、つまりリベートにある。小売店はこれを原資にビールを「目玉商品」として安くすることで集客を図るのは常態化していた。これができるのはスーパーなどの量販店、お酒のディスカウント店。そもそも奨励金は多く売る大手スーパーなどほど有利な条件になるから、大量に売るわけでも酒で釣って他の商品を売るわけでもない町の酒販店には縁遠い世界だった。

   ということで、販売奨励金は抑制され、小売価格は上がることになる。実際には個々のスーパーなどにより、価格を据え置くところもあるなどまだら模様とはいえ、全体には価格は上がっている。データ分析の「カスタマー・コミュニケーションズ」(東京)によると、ビール大手3社の主力商品(350ミリリットル入り6本パック)の全国平均価格は、6月第1週は5月に比べて平均12%程度上昇。日済新聞は、日経POS(販売時点情報管理)の5月第4週と6月第2週の比較として、ビール大手各社の主力品の店頭価格は8%前後上昇し、販売数量は約2割減少したと報じている(6月17日朝刊)。

   販売数量の落ち込みは、規制強化前の「駆け込み」で5月の販売数量が、前年比でアサヒ16%増、キリン10%増など大幅に伸びた反動もある。

   こうして、「概ね当局の想定通りの滑り出しになった」(業界関係者)が、当然ながら消費者の反発は強い。勢い、新聞の論調も、軒並み厳しい。

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