手書きの文章は、タイプされた文章よりも書き手の思いが相手によく伝わり、しかも書いた本人の性格までわかる。――東京大学や千葉工業大学、NTTデータ研究所などがつくる「アナログ価値研究会」が改めて手書きの良さを実験で明らかにして、2017年7月4日発表した。
研究チームによると、単純に「手書き」であるという事実ではなく、「時間と手間をかけてくれている」という点が読み手に評価されているという。
「時間と手間をかけてくれている」
「アナログ価値研究会」の発表資料によると、同研究会に参加しているのは、ほかに王子製紙、ゼブラ、DIC、日本能率協会。手帳、書籍、筆記具、紙媒体など「アナログ」関係の企業や団体だ。実験では、4人の男女に「身近な友人への誕生祝いのメッセージ」を次の3種類の方法で書いてもらい、20~24歳の男女40人に読ませ、印象を尋ねた。
(1)手書きでゆっくり時間をかけ、心を込めて書いた文章(内容は自分で考える)。
(2)手書きでできるだけ素早く書いた文章(内容は自分で考える)。
(3)パソコンでタイプした文章(内容は決められている)。
その結果、読み手が、「(書き手の)思いが込められている」と感じた度合いは、(1)が一番多く、(2)と(3)は差がなかった。また、書くために費やした時間について印象を聞くと、実際は(3)が一番短かったが、読み手は(1)と(3)は同じ時間をかけていると考え、(1)と(3)が同じくらい「丁寧である」と感じた。同じ手書きでも(2)のように素早く書くと、「雑である」という印象を受けたわけだ。
そして、読み手に書き手の性格を推察してもらうと、(1)が一番正確に性格を言い当てられた。2番目は(2)で、(3)は外れる度合い多かった。実は、あらかじめ書き手の4人の性格の自己評価を集めておいたのだ。手書きは書き手の性格がよく表れ、タイプ印刷は表れないことがわかった。
今回の結果について、研究チームではこうコメントしている。
「手紙や履歴書、志望動機書などでは、しばしば手書きがよいと言われてきましたが、その理由は明らかではありませんでした。今回、手書きは『時間と手間をかけている』と読み手がポジティブに感じることによって、『心が込められている』と伝わることがわかりました。また、性格という『自分らしさ』の伝達力にも優れています。ただし、素早く汚い字で書くと、タイプした文章より印象が悪くなることに注意しなくてはなりません。ここぞという時のために、『手書き』技術を確保しておくことが重要です」