大阪市で20代女性が美容整形によるミスで後遺症を負い、訴訟の末に美容外科を運営する医療法人が800万円を支払って和解したとの報道が流れた。
この件に限らず、美容整形を巡るトラブルは後を絶たない。国民生活センターに寄せられた「危害に関する相談」を見ると、施術後体に深刻なダメージを負ったケースが複数確認できる。
「危害」の相談は20代が最多、50代以上からも
大阪市のケースは、2017年7月4日付の毎日新聞電子版によると、女性が鼻を高くするためヒアルロン酸注射を受けたところ、医師が誤って目の血管に注射し、女性は緊急入院した。「左目の視野が正常より2割狭くなったり、鼻の皮膚がひきつったりする後遺症を負った」という。
今年2月には名古屋市の美容クリニックで豊胸手術を受けていた女性が、途中で意識不明となり、病院に搬送されたがその後死亡した。
国際美容外科学会(ISAPS)が2015年7月9日に発表した、2014年の美容施術(外科、非外科処置を含む)件数が多かった国で、日本は米国、ブラジルに次ぐ第3位、126万351人だった。全員が日本人かどうかはこの調査から読み取れないが、世界的に見て美容整形を受ける機会が多い国なのは間違いない。ただ、その数に比例してトラブルが頻発しては困りものだ。
国民生活センターは2017年4月28日、美容医療サービスに関するデータを公表した。同センターに寄せられる相談件数は、2011年度には1560件だったが、14年度には2624件に上った。16年度は1936件とピーク時に比べれば減ったが、それでも2000件近い。
この中で、体への危害に関する相談は何件か。同センター商品テスト部に取材すると、過去6年間で最も多かったのは、相談件数に比例して2014年で638件。16年は438件で前年比微増となった。なお17年は、7月4日時点で79件が寄せられているとの話だった。
男女比を見ると2015、16年とも女性が男性の約8倍と圧倒する。年齢別では20代が最多で、30代と40代が続く。それより上の年代も少なくない。2016年は50代で47人、60代で23人からの相談が記録されている。
「美容医療でクーリングオフ」閣議決定
国民生活センターのウェブサイトに掲載されている「危害に関する相談」をいくつか紹介する。
「美容外科でシミ取りレーザー治療を受けた。数日後、水ぶくれになった後、痕が残り、人前に出られず困っている」
「鼻筋を際立たせるため美容外科で注入充填剤を注射したところ、顔面が麻痺し口の端が動かなくなった。補償を求めたい」
「美容外科クリニックで顔のリフトアップ手術と二重まぶた手術を受けたが、顔全体が内出血をおこし腫れが引かず仕事に支障が出た。二重まぶた手術も糸がはみ出したままだが、医師は『失敗ではない』と言う。返金してほしい」
事例で多く見られたのは、二重まぶたやしみ取り、鼻を高くするといった、いわゆる「プチ整形」だ。レーザー治療や注射といった短時間の施術とはいえ、ミスが生じれば深刻な事態になることが分かる。ほかにも、全身の脂肪溶解や全身脱毛といったケースもあった。ほとんどが返金や補償を求め、治療中の人は中途解約して全額返金してほしいと望んでいた。
政府は2017年6月27日、美容医療でも一定期間に無条件で契約を解除できるクーリングオフを可能とする特定商取引法の政令改正を閣議決定した。朝日新聞ほか複数の報道によると対象となるサービスは、(1)脱毛、(2)にきび・しみなどの除去、(3)しわ、たるみ軽減、(4)脂肪溶解、(5)歯の漂白。契約期間が1か月を超え、5万円を超える施術の場合にクーリングオフや中途解約ができる。今年12月1日から施行される。悪質な美容医療に対して、消費者保護の動きが出始めた。