色覚検査が小中校でばらばら復活 ほぼゼロから9割超まで大差

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   学校の健康診断で3 、4 年前から復活しつつある色覚検査を受ける児童・生徒は、ほぼ100 %近いところもあれば、ほぼからゼロまで学校により大きな差があることがわかった。

   日本色覚差別撤廃の会 (荒伸直会長) が2017年 6月11日、川崎市で開いた年 1回の総会で話題になった。

  • 日本色覚差別撤廃の会は、色覚検査が学校によってばらばらであることを報告した(同会のホームページ)
    日本色覚差別撤廃の会は、色覚検査が学校によってばらばらであることを報告した(同会のホームページ)
  • 日本色覚差別撤廃の会は、色覚検査が学校によってばらばらであることを報告した(同会のホームページ)

広島県の実例を報告

   副会長の小田愛治さんが、2016年 9月に実施された広島県下のある市の例をくわしく報告した。この市では、裏面に色覚についての解説がある学校長名の「色覚に係る健康相談についてのお知らせ」が家庭に配られ、希望者は「検査希望連絡票」を担任に提出する。

   市教育委員会の調べでは小学校77校は54%、中学校35校では29%の児童・生徒が連絡票を提出して検査を受けた。検査は養護教諭らが「石原表」を用いて実施、小学生 6%、中学生 5%は色覚異常の疑いがあるとして眼科医を受診するよう勧められた。

   組合養護教員部会には、このうち小学校24校、中学校12校のくわしいデータが報告されていた。それによると、半数以上の児童・生徒が検査を受けた小学校は16校、中学校は 2校。小学校は 3校が 9割超 (最高96%) の一方、 1割未満 (最低0.9 %) が 4校あり、中学校も最高68%から最低 1%まで大差があった。養護教諭によって色覚検査の理解はかなり違い、担任教諭への説明で率に差が出た可能性が高いという。

   石原表は日本で開発された簡便な検査表で、色覚の原因である遺伝子異常を正確に検出できる。徴兵検査用だったが、戦後、学校にも導入された。異常があっても色の見え方や程度は個人差が大きく、日常生活に支障のない人もいる。ところが、眼科医は石原表を間違えた人を色覚異常とし、色を間違える職は無理、と進路制限を指導するようになった。

   こうした検査や指導は日本だけと知った高柳泰世医師(眼科)が、1985年ごろから大学入試や就職時の検査の実態を調査し、「不当な差別」と指摘したことから、色覚検査による規制が大きく改善され、2003年からは学校健診でも必須でなくなった。撤廃の会は高柳医師の活動に関連して生まれた当事者の会だ。

   一方、日本眼科医会は「本人が知っておくことは必要」と文科省に強く働きかけ、文科省は14年、希望者対象の検査として推奨するとの方針転換をした。

   高柳医師は「子どもに利益のない検査だが、無料なので親は受けたらトクのような感覚になりやすい。検査が広がって再び色覚への誤解や偏見が高まることが心配だ」と話している。

(医療ジャーナリスト・田辺功)

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