北朝鮮ついに「一線」超えたか トランプの面子つぶしたICBM

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   北朝鮮が2017年7月4日に大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射に成功したと発表したのに続いて、米国も「ICBM発射を強く非難」する声明を出した。北朝鮮が開発したミサイルがアラスカまで届きうるとの認識を示したことになる。

   トランプ氏は17年1月の段階では、北朝鮮がこういった兵器を持つことについて「そんなことは起きない!」と断言していた。「米国に届くかどうか」が、トランプ氏の許容範囲を示す「レッドライン」だと考えられてきたが、今回の発射実験で「レッドライン越え」の可能性が出てきた。発射後も北朝鮮は「大小の『贈り物』をヤンキーに頻繁に送ってやろう」などと挑発を続けており、トランプ氏の「次の一手」に注目が集まる。

  • 朝鮮中央テレビはミサイルのエンジンの1段目と2段目が分離される様子を放送した
    朝鮮中央テレビはミサイルのエンジンの1段目と2段目が分離される様子を放送した
  • 金正恩委員長は、ICBMの発射実験を満面の笑みで見守った(写真は労働新聞から)
    金正恩委員長は、ICBMの発射実験を満面の笑みで見守った(写真は労働新聞から)
  • 朝鮮中央テレビはミサイルのエンジンの1段目と2段目が分離される様子を放送した
  • 金正恩委員長は、ICBMの発射実験を満面の笑みで見守った(写真は労働新聞から)

北朝鮮のICBMで「世界にとって脅威のレベルが上がった」

   米国のティラーソン国務長官は7月4日(米東部時間)、

「米国は北朝鮮による大陸間弾道ミサイルの発射を強く非難する。ICBMの試験(発射)は米国と同盟国、パートナー、地域、世界にとって脅威のレベルが上がったことを示している」

との非難声明を発表した。冷戦下の1975年に米国と旧ソ連が結んだ第2次戦略兵器制限条約(SALT2)では、ICBMを「射程5500キロ以上の弾道ミサイル」と定義。これが一般的なICBMの定義として定着している。今回のミサイルが発射された北朝鮮西部からアラスカまでの距離は約5200キロ。今回のティラーソン氏の声明で、米政府として北朝鮮のミサイルがアラスカに届きうるとの認識を示したことになる。菅義偉官房長官も7月5日午前の記者会見で、

「今回発射された弾道ミサイルの飛翔高度、距離、こうしたことを踏まえれば、最大射程5500キロ。ここを越える可能性が高い」

として、米国と同様に北朝鮮のミサイルはICBMだとみている。

金正恩氏「大小の『贈り物』をヤンキーに頻繁に送ってやろう」

   朝鮮中央通信によると、金正恩氏は発射実験後に幹部や科学者、技術者を前に、

「今日、我々の戦略的選択を見つめていた米国は非常に不快だっただろう。『独立記念日(※編注:米国の独立記念日は7月4日)』に我々から受ける『贈り物』は、あまり気に入らないと思うが、これからも退屈しないように大小の『贈り物』をヤンキーに頻繁に送ってやろう」

と、満面の笑みを浮かべて語ったという。

   ICBMをはじめとする弾道ミサイルの技術的な関門は、再突入時の高熱から弾頭を保護することだとされている。この朝鮮中央通信の記事の中で北朝鮮は、

「再突入の際、数千度の高温、高負荷と振動にさらされたが、弾頭の先頭部の温度は25~45度に維持され、核弾頭爆発制御装置も正常に動作した」

とも主張。ICBMとしての技術を完成させたことをアピールしているが、日本政府は

「我が国としては分析中」(菅義偉官房長官)

とするにとどめている。

1段目と2段目のエンジンを分離する動画も

   北朝鮮は7月5日16時頃(日本時間)、朝鮮中央テレビで発射実験の様子を動画つきで初めて報じた。発射の瞬間を5つ以上のアングルから撮影して繰り返して再生したほか、ミサイルに搭載したとみられるカメラから、1段目と2段目のエンジンを分離する様子だとされる動画を放送した。

   今後注目されるのが米国の対応だ。トランプ氏は17年1月3日の段階で

「北朝鮮は、米国の一部に届きうる核兵器の開発が最終段階だと言っている。そんなことは起きない!」

とツイートしていた。このことから、トランプ氏にとっての越えてはならない一線「レッドライン」は、「米国に届きうるかどうか」だと見る向きもあった。だが、この「起きない!」と断言したはずのことがわずか半年で覆され、レッドラインを越えた可能性が出てきたことになる。トランプ氏は7月4日の発射実験1時間半後に、

「この若造は人生で他にすることはないのか。韓国と日本が、この状況にそんなに長く我慢できるとは思えない。おそらく中国は北朝鮮に強い働きかけをして、このナンセンスな出来事を、これっきりにするだろう」

とツイート。中国に改めて行動を求めた。

   米韓両軍は北朝鮮に対抗する形で、7月5日朝に韓国東岸で日本海に向けて弾道ミサイルの同時射撃演習を実施。7月7日からドイツ・ハンブルグで開かれる20か国・地域(G20)サミットでも北朝鮮のICBM問題が重要な議題になる見通しだ。

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