米CNNテレビのロゴがコラージュされたヒール役を場外乱闘で殴り倒すというプロレス動画で物議を醸しているトランプ米大統領だが、大統領就任前からツイッターを駆使してさまざまな「発言」をしてきたなかで、最も有名なものの一つが「Sad!(悲しいことだ)」という断定的な言葉だ。
実は、この「悲しいことだ」が、トランプ節を世界に拡散させる非常に効果的な方法だったということが、米ニューヨーク大学の研究によって指摘された。
ツイートの拡散力を増す言葉とは
同大学の研究者らは、研究結果を2017年5月23日に米国科学アカデミー紀要で発表している。
研究者らは「アラブの春」(2010~12年)から2016年に実施された米国の大統領選挙まで、多くの歴史的な出来事で大きな役割を果たしたのがツイッターなどのソーシャルネットワークサービス(SNS)であると考え、SNS上で議論されているさまざまな道徳的、政治的テーマを分析してきたという。
しかし、テーマの重要性に差はないはずなのに、あるテーマは大きく拡散(さまざまな人に共有される)し、あるテーマはまったく話題にならないという現象が起きることに疑問を感じ、使われる言葉による拡散力の違いを調査した。
まず、よく使われる単語を「道徳的な意味を持つ言葉(義務)」「感情的な意味を持つ言葉(恐怖)」「道徳的かつ感情的な意味を持つ言葉(憎悪)」の3つに分類。
そのうえで、ツイッターから収集した「銃規制」や「同性結婚」「地球温暖」といったテーマに言及した56万3312件のツイートに前述の3つのうちどの単語が頻出しているかを調査し、そのリツイート(ツイッター上での共有)数やリンクの共有数との関係を分析している。
すると、「義務」や「恐怖」に分類される単語の有無はツイートの拡散にほとんど影響していなかったが、「憎悪」に分類される単語はひとつ含まれるだけで20%拡散力が増加していた。
さらに、「憎悪」を含むツイートは同じ政治思想の人たちの間で大きく拡散する傾向にあり、特に愛や怒りを思わせる単語を入れることでその拡散力はさらに向上するという。その典型的な一例とされるのが、トランプ大統領の「Sad!」だ。
その乱用ぶりはよく知られており、トランプ大統領に批判的なメディアでは見出しに「Sad」と入れたり、「トランプの『Sad』まとめ」のような「ネタ」もインターネット上で散見されるほどだ。