風邪による鼻づまりやくしゃみに悩まされているとき、「ヴェポラッブ」を塗った経験がある人は少なくないだろう。あめ状ののど薬で知られる「ヴィックス(Vicks)」ブランドで販売されている、メントールの香りと湿布のような清涼感が特徴の塗り薬だ。
一般的に知られているヴェポラッブを塗る体の個所は背中や胸、のどだが、インターネット上では「足の裏に塗って靴下を履くと咳止めにも効果がある」とする情報を見かける。本当に効果があるのだろうか。
製造元の米P&Gは「想定しない使用法」
「ヴェポラッブを足の裏に塗る」という使用方法は日本よりも欧米でよく知られている、一種の民間療法のようだ。米国の電子掲示板「Reddit(レディット)」上では「おばあちゃんでも知っている古典的な方法だ」という書き込みもあった。
まずヴェポラッブの正しい塗り方を再確認するため、日本での販売元である大正製薬の製品ウェブサイトを確認したところ、「吸入」と 「湿布」の2つの作用で鼻づまりやくしゃみなどをやわらげるとされている。そもそも咳止めの効果が含まれていない。
「よくある質問」には「ヴイックス ヴェポラッブは、どこにぬると効果的ですか?」との質問が掲載されており、
「胸やのど、背中に指先や手のひらでぬっていただくと、有効成分を吸入しやすくなります」
との回答が明記されていた。足の裏とはどこにも書かれていない。
そこで、ヴェポラッブの製造元にあたる米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)にJ-CASTヘルスケアが「ヴェポラッブを足の裏に塗るという用法は想定されているのか。またそうすることで咳止めに効果があるのか」と質問をメールで送ったところ、「製品の使用方法として想定していない」との回答があった。当然、足の裏に塗って咳止めの効果があるかも確認していないという。
医師はどう考えるだろう。都内の総合病院に勤務するある医師はJ-CASTヘルスケアの取材に対し、「ヴェポラッブを足の裏に塗るというのは初耳」と話す。
「塗り薬なら当然、皮膚が厚い足の裏より胸や背中の方が成分は浸透しやすいでしょうし、香りを吸引するなら鼻に近いのどや胸のほうが効果は高いと思うのですが」
と苦笑。さらに、こう続けた。
「いずれにせよひどい咳の場合はアレルギーや感染症の可能性があります。小さな子どもであれば呼吸困難になるリスクもあり、医療機関を受診することをお勧めします」