「おそらくは、現地の電話会社と、業者が結託している。国際電話料金の一部を、電話会社からキャッシュバックとしてもらっているのでは」
今、日本各地から報告が上がっている「+675」から始まる不審な着信について、そう推理するのはITジャーナリストの三上洋さんだ。
アレクさん「変なサイトみてないよ」
南太平洋の「最後の楽園」ともいわれる、オセアニアの島国・パプアニューギニア。太平洋戦争中、旧日本軍が凄惨な戦いを繰り広げた場所としても知られる一方、現地の在留邦人が205人(2016年10月時点)ほどで、現代の日本にとって縁が深い国とは言い難い。
そんなパプアニューギニアから、なぜか自分の携帯電話に着信があった――そんな声が、2017年6月末ごろからツイッターで相次いで上がるようになった。
「知らん番号から着信やと思ったら明らか海外から。国番号調べたらパプアニューギニアやねんけど何これ...仕事したことねぇよ...」
「パプアニューギニアから着信あったんだけど、折り返すべき?」
「バイト終わったらパプアニューギニアの電話番号から不在着信あって怖い」
これら不審な着信は「+675」から始まる何種類かの番号から、いわゆる「ワン切り」の形でかけられていた。俳優として活動するアレクサンダーさん(34)も6月29日のブログで、この「謎の着信」があったと明かした。
「全く見覚えないぞ!! なんだこれ、、、、、怪しい、、、、 変なサイトみてないよ」
ほかにも、俳優の井澤勇貴さん(24)やレーサーの平川亮さん(23)などが、ツイッターで同様の証言をしている。7月4日現在も、こうした電話攻勢は続いている模様だ。
ソフバンなら、30秒249円の通話料が
折り返し発信する人が増えたことで、キャリア側でもこの事態を把握した。
7月3日、公式サイト上でいち早く警戒を呼び掛けたのはソフトバンクだ。ソフトバンクでは、パプアニューギニアへの発信は30秒で249円の通話料がかかる。不用意にかけると、高額な料金が発生する可能性があるとして、「着信履歴で、心当たりのない番号への折り返し電話をされないようお願いします」と注意した。
KDDIも4日に同様の注意喚起を発表、NTTドコモの広報担当者も4日午前、J-CASTニュースの取材に対し、事態を確認し、社内で影響などを調査中だと述べた。
さて、では実際にかけ直すと、いったいどうなるのだろうか。記者が4日、問題の番号のうちいくつかに発信してみたが、いずれも「話し中」でつながらない。ただ、ツイッター上では、女性が出て片言の日本語で「コンニチハ」などと応答した、あるいは英語で何やら話しかけてくるが、会話が成立しないままやがて切れてしまった――といった報告が複数上がっている。
とはいえ、「それだけ」である。往年の「ダイヤルQ2」のような有料番組につながるわけでもない。かかるのは国際通話料のみだ。各社の広報担当者も、「目的がわからない」と首をかしげる。
現地の電話会社も関与?
そんな中、ITジャーナリスト・三上洋さんが「あくまで推測ですが」と言いつつ挙げるのが、現地の電話会社と、悪徳業者の「結託」説だ。
まず業者は、パプアニューギニア国内の番号から、今回のように「ワン切り」で大量に電話をかける。日本からかけ直す人が出れば、現地の電話会社の懐には、高額の国際通話料が転がり込む。そのうちいくらかを、問題の業者に「キャッシュバック」する――というのが、想定される手口だ。
「ワン切りから国際電話へと折り返させる、こうしたやり方は昔からよく行われています。過去にはモルディブ、また少し手口は違いますがシエラレオネ、さらに以前には香港などから、似たようなケースがありました。ほぼ、新興国の電話会社が使われているのが特徴です」