自民党が惨敗した東京都議選(2017年7月2日投開票)で、安倍晋三首相が唯一街頭演説に立って話した内容が波紋を広げている。聴衆の「帰れ!」コールに安倍氏は「こんな人たちに、私たちは負けるわけにはいかない」と声を荒らげて反論したのだ。
東京新聞の記者は菅義偉官房長官の会見で、安倍氏の発言を「有権者をある意味、軽視している」と非難。菅氏は、発言に問題は「全くない」上、「きわめて常識的」だと主張している。
「帰れ!」「安倍辞めろ!」の怒号
安倍氏は都議選の投票日を前日に控えた7月1日夕方、秋葉原駅前で応援演説に立ったが、聴衆からは「帰れ!」「安倍辞めろ!」の怒号が止まなかった。これに対して安倍氏は怒号が聞こえる方向を選挙カーの上から指さしながら、
「皆さん、あのように、人の主張の、訴える場所に来て、演説を邪魔するような行為を私たち自民党は絶対にしません!私たちはしっかりと政策を真面目に訴えていきたいんです!憎悪からは、何も生まれない。相手を誹謗中傷したって、皆さん、何も生まれないんです。こんな人たちに、皆さん、私たちは負けるわけにはいかない!都政を任せるわけにはいかないじゃありませんか!」
などと声を張り上げて反論した。
この安倍首相の反論をめぐっては、朝日新聞が7月3日の社説で
「首相にすれば、ごく一部の批判派による妨害だと考えたのだろう。だが都議選の結果は、首相の政権運営に対する『NO』の声は、決して一部にとどまらない現実を物語る」
と論評。毎日新聞は7月4日朝刊で「首相 聴衆にまで激高」の見出しで発言を報じた。その中で、「首相が街頭演説で有権者に声を荒らげるのは異例」と、発言の特異さを指摘しながら、発言を批判する識者の談話を紹介している。