暑い季節、運動に励む子どもたちは水分補給が欠かせない。水筒に飲み物を入れて持ち歩く機会も増えるだろう。
だが、こんな怖い実話がある。番組で紹介したのは、運動後に仲間たちと水筒を回し飲みした6人の子どもが、吐き気や腹痛、めまいを起こした事例だ。
吸収しきれない銅が肝臓に蓄積されると肝硬変に
6人が一斉に同じ体調不良を訴えたため、診断に当たった医師は食中毒を疑った。しかし、誰も同じ食べ物を口にしていなかった。
実は水筒に問題があった。実際にこの事例を扱った東京都健康安全研究センターの職員によると、子どもたちが飲んだ水筒の内面が破損して銅が露出し、酸性のスポーツドリンクと反応したことで「急性銅中毒」になったという。
銅はレバーやカキに含まれ、一定量は体に必要だ。胃と小腸で吸収され、肝臓に送られてたんぱく質と結合し、赤血球や骨の形成を助ける働きをする。ただし急激に大量の銅を摂取すると胃や小腸の粘膜を荒らして、初期症状として腹痛やおう吐を引き起こす。さらに肝臓が銅を吸収しきれなくなると体全体に分散、蓄積していく。脳にたまるとけいれんに、また肝臓にたまると肝硬変につながる恐れがあり、最悪の場合は命を落とす。
子どもたちが使った水筒は、内面のステンレスに穴が開いて銅が露出していた。中に入っていた液体を確認したところ、青緑色に変色していた。これは酸性のスポーツドリンクで銅が溶けだした影響だ。
酸性の飲料はほかにもオレンジジュースや乳酸菌飲料、炭酸飲料があり、やはり銅を溶かす恐れがある。日本メーカーの水筒は現在、飲料が直接触れる部分に銅を使っていないが、古い製品や海外製には注意が必要だ。
銅鍋で調理中に焼きそばソースをかけた
急性銅中毒を発症した例が、ほかにもあった。ある弁当店が販売した焼きそばで、複数の人が中毒症状を訴えたのだ。
まず、焼きそばを調理した際に銅鍋を用いていた。長年使用してきたことで、銅鍋の表面にはたくさんの傷がつき、銅がむき出しになった。そこに、焼きそばソースをかけた。これは酸性の調味料で、「水筒とスポーツドリンク」の事例と同じような現象が起きてしまったと考えられる。
調味料では焼きそばソースのほか、ケチャップ、マヨネーズ、酢も酸性だ。
厚生労働省は、銅製の調理器具や食器は原則、食品と接する部分を別の金属でメッキ加工を施さねばならないとしている、洗浄する際に金属製のたわしでゴシゴシこすると、メッキがはげ落ちて銅部分があらわになる恐れがある。
銅中毒になると、肝臓に大きな損傷を与える恐れがある。医師は、自己診断で「食中毒だろう」と決めつけて医療機関を受診しないのが一番怖いと警鐘を鳴らした。