中国で車を運転しながらラジオを聞くと、「とてもドイツ的」というキャッチフレーズが何度も流れてくる。ドイツと言えば「謹厳」というのが中国人の第一印象だ。自動車から爪切りまで、中国人はドイツ製を非常に高く評価しており、ドイツの「国民性」に至っては神格化すらさせている。自分たちが中国人の心の中で超俗した存在になっていることを、8000万人のドイツ人は知りもしないだろう。
青島の下水道のデマ
中国人がドイツ製に対して「迷信」を持っていることは、以下の2つのデマからもうかがい知ることができる。中国国内の大都市で冠水が発生するたびに微博(ウェイボー、中国版Twitter)や微信(Wechat、中国版LINE)には、次のような都市伝説が流れる。
「青島で都市型水害が滅多に起こらないのは、青島には100年前にドイツの植民地だったときに造られた下水道システムがあるからだ」。
この話には補足がある。ドイツ人はスムーズに部品交換をするため、下水道の中に部品のスペアが揃った倉庫(部品のスペアを油紙に包んで保存しているという説もある)も配置したため、100年後になっても中国人は当時の企業に連絡することができ、中国人にスペアの場所を教えてくれた、というものだ。多くの中国人に「ドイツ人はきっとこのように謹厳なのだ」と思われている。
しかし実際、青島に冠水が極めて少ないことと、ドイツ人の下水道には全く関係がない。
ドイツが青島を統治していた時、おおよそ80キロメートルにわたる下水道を造ったが、100年近く経ってから作り直され、今では3キロメートルほどしか残っていない。これは3000キロメートル近い青島の下水道の全長の1000分の1である。
青島に冠水が少ない理由は主に地形のおかげである。青島市は西高東低の土地で、三面が海に面しており、洪水が起きても容易に海に排出することができる。もちろん、青島は確かにドイツの下水道排水の設計理念を参考にしているが、このこととドイツ製は全く関係がない。