財政出動への「誘惑」
まして、財政出動への「誘惑」が強まっている。「中長期的に債務残高GDP比を下げるには、PBの黒字化は不可欠だ。短期的な歳出拡大や増税先送りの方便として目標を変更するなら大問題」(日経)であり、「財政出動で期待したほど経済が成長しなければ、借金だけが積み上がり、新指標も悪化する」(毎日)。
したがって、各紙は「真の経済再生には、成長力を強化し、増税や歳出削減も含む財政健全化を進めることが必要だ」(日経)、「PB黒字化が難しいなら、追加的な歳出・歳入改革を講じるべきだ」(産経)などと、歳出入の改革を要求。朝日は「今後、国の財政をどう運営するつもりなのか。政府には国民に対して説明する責任がある」と、「丁寧な説明」を迫る。
これらに対して、読売(6月5日)は「人材投資の財源確保が問題だ」とのタイトルにあるように、「人材投資」という歳出面から書き起こし、「人材を重視する方向性は理解できる。着実に進めてほしい」と、歳出に先に「お墨付き」を与えたうえで、財政に話を進めるという論理構成になっている。例えばこども保険について「政策の狙いを国民に十分説明し、費用負担の在り方を幅広く議論すべきだ」と、実質的に後押しする姿勢。
財政全般について、GDP比という新目標を加えたことに、「二つの目標のどちらを優先するかが曖昧で、結果的に財政規律が緩む恐れは拭えない」などと指摘しているが、新目標自体には「高い経済成長を続ければ、それだけ数値は改善に向かう。経済成長を通じて財政再建を進める姿勢を明確にしたと言える」と、安倍政権の狙いを代弁し、直接の評価は避けたものの、実質的に支持する姿勢をにじませることで、他紙との違いを際立たせた。