目の前のアイテムが一瞬でキャッシュに変わる――そんなキャッチコピーを掲げるアプリが2017年6月28日、サービスを開始した。
その名は「CASH(キャッシュ)」。スマートフォンで手持ちの衣類などを撮影して送信するだけで、「審査」なしに、すぐに現金が振り込まれるというから驚きだ。たちまち利用者が殺到、オープン24時間足らずで一時新規の申し込みをストップする騒ぎとなった。
2か月以内に物を送るか、お金を返すか
運営企業のバンク(東京・渋谷区)は、オンラインストアを簡単に作成できるサービス「STORES.jp」を手掛けた起業家・光本勇介氏が、2017年2月に立ち上げた。
いったいどんな仕組みなのか。まず利用者は、ブランド品やガジェットなど、自らの所持品をまずはスマホで撮影、アプリを通じて送信する。すると、自動的に「査定」が行われ、ただちに金額が表示される。ユニークなのは、そのお金は、指定した口座への振り込みやコンビニ支払いなどの形で、すぐに現金化することが可能な点だ。金額は2万円程度以内に抑えられているとはいえ、ユーザーからすれば、実際の物品のやり取りをする前にお金が手に入ることになる。
撮影した物品は、2か月以内に同社に送らなければならない。もし手放したくない場合、15%の「キャンセル料」をプラスした額を、やはり2か月以内に同社に返金することとなる。自分の所持品と引き換えにお金を受け取り、お金を返して所持品を取り戻すか、「質流れ」させるか選ぶ。複数の人が指摘しているように、昔ながらの「質屋」に近い部分がある。
ただ、同社としてはあくまで貸金業ではなく、中古品の買い取りサービスであると主張している。サイトに掲げられているのも「古物営業法に基づく表記」で、返却時の15%の上乗せ分も、利息などではなくあくまで「キャンセル料」という立てつけだ。一方で、光本氏はネットメディア「TECHWAVE」のインタビューなどで、実質的には「少額融資」(マイクロファイナンス)の領域を狙っていることを明かしてもいる。
この件についてJ-CASTニュース編集部が、金融庁に見解を尋ねたところ、個々の事例ごとの判断になるとした上で、「一般的には、貸し付けを業として行うには、貸金業の登録が必要になる」との回答があった。
16時間34分で「査定」中止
いろいろな意味で他に類を見ないサービスということもあり、28日のアプリ公開とともに、どっと利用者が詰めかけた。とはいえ、冷やかし的な人も多く、ツイッターなどでは、「エアコンのリモコン」や「コンビニの冷やし中華」、「緑茶」、「お皿」、「100均のヘアゴム」など、とても価値がないようなものの写真を送ったにもかかわらず、ブランド品やスマホなどとして、高額で査定された、といった報告も相次ぐ。
結果、公開から「16時間34分」後の29日、新規の査定を一時中止するとの発表が。運営会社によれば、アプリは29241回ダウンロードされ、約3億6600万円の「キャッシュ化」が行われたという。さらに、返金ではなく、「買い取り」が選ばれた商品は7512個に上る。
代表の光本氏はサイトに掲載されたコメントの中で、
「苦渋の決断ではございましたが、弊社は社員4名ほどの企業となり、現実的には毎日7000点以上のアイテムをご利用者様より受け取り処理をいたしましたり、毎日3.5億円以上のキャッシュを供給させていただくには体制や規模が整っておらず、致し方なく、サービスの利用を一時的に停止させていただくことと至りました」
と述べ、運営の見通しが甘かったことなどを謝罪、体制を整えた上で再始動するとした。
J-CASTニュース編集部では、運営会社に取材を申し込んだが、電話は何度コールしてもつながらない状態が続いており、メールに対しても、30日19時現在回答はない。