陸上やテニスで禁止薬物の違反が相次いでいるロシアだが、今度はサッカー界にも疑惑が浮上した。その渦中には2014年のブラジル・ワールドカップ(W杯)に出場した代表選手が含まれており、国際サッカー連盟(FIFA)の調査を受けているという。
ロシアは次回2018年W杯の開催国だが、仮にクロ判定が出た場合は前代未聞の事態になりかねない。
ブラジルW杯出場の23人を含む34人
2017年6月24日付の英紙「デイリー・メール」によると、FIFAはブラジルW杯に出場した全23選手がロシアの国家的なドーピング隠蔽に関わっているかどうかを調査しており、他に11人のサッカー選手が同様の疑惑をもたれているという。この合計34人のうち5人は、現在開催されているFIFAコンフェデレーションズカップにも出場している。
また、34人の選手のうちの何人かは尿サンプルの結果に不自然な点があるとして世界アンチ・ドーピング機関(WADA)に懸念を持たれている。こうした状況を受けてWADAの前会長で国際オリンピック委員会(IOC)委員のリチャード・ディック・パウンド弁護士は「FIFAはロシアW杯開催前に分別ある結論を出す大きな義務がある」と主張している。
これらサッカー界へのドーピング疑惑について、17年6月26日付AFP通信によると、ロシアのビタリー・ムトコ副首相は「ナンセンスだ」と一蹴した。FIFAもブラジルW杯のロシア代表選手らについて、同大会中の試合前後に行われたドーピング検査ではすべて陰性だったとしている。
これに対し29日付のAFP通信は、WADAがドーピング検査のためロシアのサッカー選手から155の尿サンプルを押収したと伝え、疑惑の検証が進められているようだ。WADAはサンプル押収をFIFAにも通達しているという。
過去の例では4年間出場禁止の選手も
「デイリー・メール」前出記事ではWADAの委託で行われ2016年に発表された「公式報告」を紹介。「少なくともロシアの1000人のアスリートが同国のドーピング管理過程における『慣行化された改ざん』によって支援を受けているのが分かった」としている。競技別人数は、陸上が200人以上、他13競技でそれぞれ数十人ずつに及んでいる。さらには関係筋の話として、同国のドーピング違反約600件について証拠をつかんでいると主張している。
ロシアは陸上界で国ぐるみのドーピング違反問題が発覚し、国際陸上連盟によって16年8月のリオデジャネイロ五輪では陸上チームの出場が禁じられた。また、テニス界では元世界ランキング1位のマリア・シャラポワが16年1月の全豪オープンでドーピング検査の陽性反応が出た。国際テニス 連盟(ITF)によって1年3か月の資格停止処分を受け、17年4月にようやく復帰がかなった。
競技外でも、ロシア・アンチ・ドーピング機関の元幹部であるビャチェスラフ・シニョフ氏とニキータ・カマエフ氏が16年2月に相次いで死亡するなど、同国ではドーピングをめぐって不穏な状況が続いていた。
国際サッカー界では過去、元サウジアラビア代表のモハメド・ヌールが15年11月に禁止薬物の陽性反応が出たため、事態を重く見たFIFAがスポーツ仲裁裁判所(CAS)に訴えると16年12月、同選手に4年間の試合出場停止処分が下された例がある。