産婦人科医院の隣の土地に、寺院が納骨堂を建てる計画が千葉県浦安市で進められている。この医院と地元医師会は反対している。
「納骨堂自体は社会的に必要だと理解はしていますが、当院を選んでくれる患者さんのことを思うと...」。同医院の担当者は複雑な胸の内を明かす。
「隣と分かった時は驚きました」
J-CASTニュースの2017年6月29日の取材に答えた浦安市環境保全課の担当者によると、宗教法人・千光寺(浦安市)が納骨堂を含む寺院を医療法人社団・佐野産婦人科医院(同市)の隣の土地に建設して経営する計画を進めている。
現行の関係法令上は、この納骨堂の建設に問題はないという。だが、同医院と浦安市医師会からは建設中止と、医療機関の周辺に納骨堂を建設できないようにする趣旨の条例制定を求める要望書が市に提出された。担当者は、要望書の内容を汲むかどうかは「未定です」としつつ、「今後、何らかの条例改正を行う方向で考えています」と話している。
産婦人科医院の隣に納骨堂を建てるこの計画について共同通信が24日に報じると、インターネット掲示板2ちゃんねる上では
「産科としては怒ってもしゃあないか」
「子供生まれるってときは縁起を担ぐからねぇ」
と医院の意に寄り添う声と、
「何で反対するのかマジで理解できない」
「何が悪いのか理解に苦しむ」
と建設を容認する声との両論が書き込まれた。
佐野産婦人科医院の事務方の担当者は29日、J-CASTニュースの取材に対し、「近所で納骨堂が建つという話は耳にしていましたが、まさか隣と分かった時は驚きました」と話す。担当者は、「納骨堂が社会的に必要なのは理解していますが」と、反対する理由を明かす。
「低くない確率で流産する患者さんもいます」
「言葉にはしづらいのですが、出産の場に当院を選んでくださる患者さんのことを想像すると、良い気持ちがしない方もいるのではないかと思います。また、低くない確率で流産する患者さんもいます。もしそれが当院の診断で判明し、院を出てすぐ隣に納骨堂が見えたら、『傷口に塩を塗る』とまでは言いませんがやりきれない気持ちになります」
建設計画を同医院が知ったのは4月で、取材時点でも建設は始まっておらず更地の状態という。建設予定地は約460平方メートルで、もし建ったら「窓を開ければすぐに見える距離感と大きさです」と医院の担当者は話す。
同医院では、納骨堂に反対する署名を市内約4000人分含む合計約7000人分を集め、浦安市医師会とも協力して5月に市に前出の要望書とともに提出した。署名の旨は医院ウェブサイトでも掲載しており、「反対表明は今後も続けていきます」と話している。
今回の計画は、もともとあった浦安市内の社殿が2011年の東日本大震災で被災したため、災害に耐え得る建物を再建する趣旨だとされる。
今回、J-CASTニュースが千光寺に「反対を受けて何らかの対応をする予定はあるか」などについて6月29日、取材を申し込んだが、担当者からの回答は「現在、近隣の皆さまにご説明に伺っている最中ですので、現時点では何もお話しすることができません」とのことだった。