マダニが媒介するウイルスによって発症する「クリミア・コンゴ出血熱」の感染例が、近年西欧や地中海沿岸諸国、北アフリカなどで相次いでいることを受け、厚生労働省は2017年6月22日、海外渡航者に対する注意喚起を発表した。
発症後2週間程度で約30%が死亡
クリミア・コンゴ出血熱は発熱や出血が主な症状の感染症。ウイルスを持った「イボマダニ」に咬まれることにより感染するほか、感染した動物や患者の血液や体液に直接触れることでも感染する。国立感染症研究所が日本ウイルス学会誌で発表したレポートでは、羊やヤギなどの家畜は感染しても出血などはせず、症状を発症するのは人間だけだという。
厚労省検疫所によるとイボマダニの北限(生息できる最も北の地域)が北緯50度となっており、北緯50度以南のアフリカやバルカン半島、中東が主な発祥地とされていたが、2016年にはスペインやポルトガルでの感染が確認。今年に入っても北アフリカ諸国で相次いで確認され、同省は西欧への渡航時にも注意するよう呼びかけている。
症状出現後2週間程度で約30%が死亡する致死性が高い感染症だが、ワクチンや予防薬、治療薬は存在せず、発症後の対処療法しかない。
そのため、イボマダニとの接触を避けることが重要で、厚労省は「藪などに入る場合は長袖長ズボンで肌を覆う」「羊などの家畜に素手で触れない」といいった対策を必ず取るよう求めている。