「上方修正の常習者」
東宝の場合、かつて全国にたくさんあった映画館の跡地を利用した不動産事業も存在感がある。映画がヒットするかどうかは予測しがたいだけに、業績を下支えする重要なセグメントだ。2017年2月期は売上高が前期比1.1%減の614億円だったが、営業利益は13.8%増の168億円を確保した。利益の額は大ヒットに恵まれた映画事業の半分にあたる。もう1つの柱は帝国劇場などで上演する演劇だが、2017年2月期の売上高は155億円、営業利益は32億円にとどまり、屋台骨を支えるほどではない。
一方、2018年2月期について、東宝は売上高が前期比1.9%減の2292億円、営業利益は18.6%減の409億円、純利益は11.0%減の296億円と減収減益を予想する。ただ、東宝は期初の業績見通しを固めに出すのが特徴で、「上方修正の常習者」であることを投資家は知っている。すでに4月公開の「名探偵コナン から紅の恋歌」といった自社配給の定番アニメのほか、やはり4月公開の米ディズニー「美女と野獣」実写版がヒットし、映画館の稼働率が高まっている。今夏には「宮﨑駿監督の後継者」とされる米林宏昌監督の最新アニメ「メアリと魔女の花」が公開される。こうした足元の状況も好感され、東宝株は6月20日の取引時間中に3510円と27年ぶりの高値をつけ、週明け後もさらに上値を追う展開になっている。