毎日の料理に「新しい経験」と「実験」を
和田医師は、派手な服にためらいがあれば、試着だけでもするといい刺激になり、色にこだわりがあるのなら、選ぶデザインを変えてみることを勧めた。年をとってからの前頭葉は、弱い刺激では活性化されない。だから少しずつでも服を変化させ、強い刺激にするといいそうだ。
和田医師が勧める第2の方法は、毎日の料理に「新しい体験」を加えること。料理は、分量を計る、手先を使う、味を確かめるなど複雑な作業が盛りだくさんで、とても頭を使う。そこで、料理で感情の老化を防ぐポイントが「実験」と「創造性」だ。澤田マキコさん(54)は話題のスーパーフード、キヌア料理に挑戦した。「美と健康にいいそうで、初めて買いました」と、あえてレシピを見ずに圧力釜で炊いた。15分炊くと少しやわらかい。そこで水を減らし再び炊く。そのうち「パンに使えるのでは」と思い、得意のパンに焼きあげた。
キヌアのサラダを作ろうとした時、庭で栽培しているイチゴとミントをトッピングすることを思い立った。盛り付けも可愛らしく工夫した。
澤田さん「おいしかったです。でも、頭が疲れました~。ぐったりです」
和田医師によると、このように脳みそが汗をかくほど頭を使うことが前頭葉の活性化になる。昔、旅先を味わった異国の料理など、「思い出の味」に挑戦したりすることもいいそうだ。
和田医師が勧める第3の方法が、「趣味のプチ工夫」だ。たとえば、ここ数年「脳トレ」の1つとして人気の「大人の塗り絵」。色鉛筆を使って「塗り絵本」に彩色していくものだ。寿時(じゅじ)バンさんは十年ほど前に脳出血を発症し、リハビリ生活を送っている。寿時さんは、「大人の塗り絵」に工夫をこらしている。ただ平面的に塗るのではなく、写実的に塗ることを心がけ、自分のオリジナルの色を生み出した。色鉛筆で重ね塗りをして新しい色を作り、陰影を表現して絵から飛び出すようにリアルに描く。おかげで、言葉の回復が順調だ。