母親の献身的な行動から子どもは危険を学習
ところで、オキシトシンは脳の扁桃体と呼ばれる部分で分泌される。母ラットの扁桃体でオキシトシンが分泌されないようにして同じ実験をすると、母ラットは子どもが一緒にいても、ペパーミントの香りをかぐとフリーズしたままになった。子どもを守る行動をとらなくなったのだ。自己防衛本能をつかさどる部分も同じ扁桃体にある。このことから、リッケンバッハ博士らは、オキシトシンが自己防衛反応を起こす神経回路に作用し、フリーズなどの防衛行動をストップさせていると考えている。リッケンバッハ博士らは論文の中でこうコメントしている。
「詳しいメカニズムはまだ不明ですが、人間にも同じ仕組みがある可能性があります。興味深いのは母ラットの行動によって。子ラットもペパーミントの香りが危険であることを学習したことです。母親のお腹に抱えられた子ラットは、1匹の状態でペパーミントの香りをかがせられるとフリーズしたのです」