将棋の最年少プロ棋士、中学3年生の藤井聡太・四段(14)が歴代最多記録を更新する29連勝を達成した。
破竹の快進撃は同じ若手のホープ、19歳の増田康宏・四段でも止められなかった。増田四段は対局前から藤井四段への強烈な「ライバル心」を頻繁に口にしていた。
藤井「良くなったかは最後までわかりませんでした」
藤井四段と増田四段は2017年6月26日、東京の将棋会館で行われた第30期竜王戦1回戦で激突。朝10時に始まった対局が終わったのは21時を回っており、91手で藤井四段が勝利した。
藤井四段は14歳2か月でプロ入りして以来、初戦で加藤一二三・九段を破ったのを皮切りに公式戦で1度も負けることなく29連勝。神谷広志・八段(56)が五段だった1987年に樹立した28連勝を30年ぶりに塗り替える偉業を達成した。
対局直後、藤井四段は「途中苦しくなったので、最後はなんとか食いついてという感じでした。良くなったかどうかは最後の最後までわかりませんでした」と話している。29連勝は「自分でも信じられないというか、今日も含めて厳しい将棋が数多くあったので、非常に幸運でした」と、その様子はいつもと変わらぬ謙虚さを帯びていた。
一方、増田四段は「序盤はうまくいったかなと。中盤しのげるかと思ったんですけど、意外と攻めが厳しくて」と苦しんだ。そして藤井四段の印象を問われると、10秒ほど「うーん、そうですね...」と悩んだ後「やはり中終盤がかなり強かったなと思います」と悔しさをにじませた。
増田四段「『将棋界はぬるい所』と思われるのは悔しいです」
増田四段は現役プロ棋士で藤井四段に次いで2番目に若く、10代は17年6月現在でこの2人しかない。プロ入りは14年10月、16歳で高校2年生の時で、若手の登竜門とも言われる2016年の第47回新人王戦では優勝している。まさに将棋界のホープだったが、16年10月に藤井四段が最年少記録を塗り替えてプロ入りし、不敗の連勝記録を伸ばしていくと注目は藤井四段に集まった。
その中で迎える竜王戦開幕前の6月21日、増田四段は読売新聞朝刊に寄せたコメントで「本戦の初戦は注目されると思います。藤井四段が勝ちすぎている現状があり、『将棋界はぬるい所』と思われるのは悔しいです。負けられない対局なので、力勝負に持ち込み、攻め勝つ心構えです」と強烈に意識。
2人は3月12日にAbemaTVの企画「藤井聡太四段 炎の七番勝負」でも一戦を交えていたが、この対局前にも増田四段は「藤井君があっさり中学生棋士になって一気に注目が集まっていったので、それ(自分への注目)を取り戻すために頑張りたいと思います」と闘志をたぎらせていた。
だが、この対局を制したのは藤井四段だった。後に、将棋のポータルサイト「将棋情報局」5月16日付で掲載された増田四段のインタビューでは、これまでで「負けて一番悔しかった将棋は?」の問いに「AbemaTVの藤井四段戦です。生まれて初めて年下に平手(編注:互いに駒落ちせず、すべての駒を使う対局)で負けました」と答えている。
なお、増田四段はプロ棋士となってから今回の藤井四段戦前までに116局指して82勝34敗。また、藤井四段がプロ入りする前の奨励会時代にも2人は2度対局しているが、いずれも増田四段が勝利していた。
こうした2人の今回の対局後、ツイッター上でも両者を称える投稿が相次いでいた。
「増田四段19歳か...藤井四段と良いライバル関係だね」
「どちらも今後期待の10代棋士」
「いつか再戦して勝ってほしい。リベンジしないとね」
「今日を機に、増田先生が鬼のような棋士になるように期待します。増田-藤井時代がきっと来るでしょう。増田先生、素晴らしかったと思います。羽生(善治)-森内(俊之)両先生の激闘を感じました」