エアバッグのリコール(回収・無償修理)問題をきっかけに経営悪化に陥っていたタカタは、東京地裁に民事再生法の適用を申請、受理されたと2017年6月26日に発表した。東証第1部に上場する企業の経営破たんは、2015年9月の海運業、第一中央汽船以来1年9か月ぶり。タカタは事業を続けながら、裁判所の管理下で早期の再建を目指す。
タカタの米国子会社、TKホールディングスも、米連邦破産法第11条(日本の民事再生法に当たる)の適用を申請。スポンサーに中国・寧波均勝電子傘下の米自動車部品会社、キー・セイフティー・システムズ(KSS)が就くことで基本合意したことも発表した。
製造業としては戦後最大の倒産
タカタは、エアバッグのシェアでスウェーデンのオートリブに次ぐ世界第2位。滋賀県彦根市で織物工場として創業。その技術を生かして1960年からシートベルトを手がけ、80年にエアバッグの量産を開始した。チャイルドシートやステアリングホイールなどの製造・開発も手がける。
しかし、2004年以降に国内外でエアバッグの不具合、異常破裂が表面化。08年11月に、ホンダが初めてリコールを届け出たほか、その翌年には米国とマレーシアで異常破裂による死亡事故が発生した。死者は米国などで十数人にのぼっている。
欠陥エアバッグのリコール対象台数は2016年5月末時点で、世界で1億2000万台規模にのぼり、それらのリコール費用が経営を圧迫する一方、15年11月にはホンダがエアバッグ部品の採用中止を表明するなど、自動車メーカーからの受注減の動きが加速した。17年1月には、米司法省と10億ドルの和解金を払うことで合意している。
タカタの2017年3月期の連結最終損益は795億円の赤字。3期連続の最終赤字となった。東京商工リサーチによると、負債総額は自動車メーカーが立て替えているリコール費用を含めて、約1兆7000億円にのぼり、製造業としては戦後最大の倒産という。
タカタの高田重久会長兼社長は、6月26日の記者会見で「すべての関係者、債権者にご迷惑をおかけすることになり心より深くおわびしたい」と陳謝したうえで、「民事再生法の適用は申請したが、スポンサーとなる米キー・セイフティー・システムズ(KSS)との最終合意などはこれからで、次の経営陣に承継できるメドがついた段階で辞任したい」と、経営責任について考えを示した。
自動車メーカーの「タカタ離れ」はさらに進む
「製造業としては戦後最大の倒産」というタカタの経営破たん。下請け企業を含め、連鎖倒産が気になるところだが、帝国データバンク情報部の内藤修氏は、「短期的には、軽微でしょう。タカタ自身、取引先に対して、きちんとした対応していく用意があるとアナウンスしてきましたし、また(リコール)問題が発覚して随分経ちますから、慌てるようなことはないと考えています」と話す。
同社の調べでは、タカタグループの下請企業は合計で、全国で571社(一次下請先141社、二次下請先430社)がある。これらの一次下請先、二次下請先の総従業員数は5万9669人にのぼる。
都道府県別でみると、一次下請先では愛知川製造所や彦根製造所などの設備があり、タカタの発祥の地でもある滋賀県が30社でトップ。連結子会社のタカタ九州の本社がある佐賀県も10社を数える。
また、年商規模別では、「10億~50億円未満」が最多で、一次下請先・二次下請先の合計で180社を数えた。全体の6割強が年商数十億円から数百億円の中規模クラスの業者が占めている。
「ただ、中・長期的には不安があります」と指摘。「自動車メーカーも当座は支援しますが、新たな開発車種には外していくでしょう。『新生・タカタ』がどのような絵を描けるかにかかわってきます」と話し、再建計画がまとまるのに時間がかかるようだとタカタ離れがさらに加速する可能性がある。
すでにトヨタ自動車系では、2017年5月に豊田合成がエアバッグ用インフレータのタイセルと業務・資本提携を結んだ。エアバッグの世界シェア首位のオートリブはこの機に、さらにシェアを高めているとされる。
自動車メーカーに詳しいTIWのアナリスト、高田悟氏は「(自動車メーカーの)取引は縮小傾向に進むことでしょう」と話している。