【主治医が見つかる診療所】(テレビ東京)2017年6月19日放送
「日本人50%が発症!? がん予防&最新治療SP」
1980年代、口にくわえたゴムが顔面でパチーンと弾ける芸でおなじみだったお笑いコンビ「ゆーとぴあ」。そのひとり、ホープさん(67)は今も現役の芸人だが、過去10年ほどで4つのがんに襲われた。
ショックで心身が疲弊し、大手術も経験した。こうした苦難を乗り越えようと、芸人らしく「笑い」を武器にがんと向き合った。
がん患者同士「長生きしよう」と励まし合った
最初のがん体験は2007年、ホープさんが57歳のときだった。それまで大酒を飲み、タバコは1日3箱。不摂生を重ねていたと本人は振り返る。医師の知人と食事をしている際に、がんの検査を勧められて何気なく受けたのが、発見のきっかけだった。内視鏡で大腸を検査したら、医師が驚いた。がんの疑いがある腫瘍が10個以上見つかったのだ。実際に、一部からがん細胞が見つかった。
幸い転移しておらず、治療が実った。しかし「がん」という事実に衝撃を受けたホープさんはひどく落ち込み、「ゆーとぴあ」を解散してしまう。
そして2013年、63歳で今度は別の症状が現れた。
ホープ「やたらとせきが出るの。たんの中に血が混じってた。その時『あ、何かおかしいな』と思いました」
CT(コンピューター断層撮影装置)の結果、肺がんが宣告された。6年前の大腸がんからの転移ではなく、新たにできたがんだとわかった。しかも、余命半年だという。「半年か、どうしたらいいんだろう」。ホープさんは途方に暮れた。実妹も肺がんで、亡くなる前とても苦しんでいた様子を思い出した。
入院中、がん患者同士で「妙な仲間意識が出来た」とホープさん。お互いに率直に胸の内を語り、「長生きしよう」と励まし合ったという。
左肺の上半分切除の大手術は無事に成功した。幸い転移はしておらず、命を取り留めた。
「病気は自慢しろ」の意味
手術から5か月後、急激に体重が減り再び病院で検査を受けた。すると、胃と小腸にがんが同時に見つかった。ホープさん曰く、小腸のがんは「何十万人にひとり」という珍しさだという。
がんの摘出は、前回以上の大手術となる。その直前、テレビの正月番組に出演したホープさんは、これから命のかかった手術に臨む男性とは思えないほど明るい表情で芸を披露していた。
8時間に及ぶ手術は成功した。その5か月後、ホープさんはお笑いの舞台に復帰する。今では舞台上で、あえてがんの手術痕を見せるなど、がんの理解を広めようと活動している。
がんをきっかけに、10年前に一方的に別れた「ゆーとぴあ」の相方、ピースさん(62)とも再会した。ピースさんもがんを患い、電話で話をするうちに付き合いが復活したという。
ホープさんは、たとえ自分の病状が深刻でも、入院中は自分の病室に同じがん患者を「友人」として集め、がんを笑い飛ばすようにふるまった。番組に出演した日本薬科大学学長で漢方医の丁宗鐵氏は、こう話す。
丁氏「漢方では昔から、『病気は自慢しろ』っていう。自分の病気を語ることで仲間が増え、新しい治療法なども知ることができる。隠すのが一番いけない」
また、笑いは免疫力を上げる効果を期待できるという。ホープさんが芸人らしく、がんを笑いに変えたのは、4つのがんに打ち勝つ一助となったかもしれない。