「精神障害者福祉手帳」、この20年で交付者7倍に 国民のメンタルヘルスは危機的状況

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   市民の人権擁護の会日本支部 (米田倫康・代表世話役) などが主催する精神科医療の勉強会が2017年 6月19日、東京・衆議院議員会館で開かれた。国会で継続審議になった精神福祉法改正案を見据えた市民活動の一環だ。

   「どのように国民のメンタルヘルスを守るのか」をテーマに、米田さんと、精神医療被害連絡会および全国オルタナティブ協議会の中川聡代表の 2人が講演をした。

  • 勉強会を開催した「市民の人権擁護の会」のホームページ
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4人の精神科医から 7つの異なる病名

   米田さんは、専門家であるはずの精神保健指定医がメンタルヘルスの危機を招いていると指摘した。行政や医師は早期受診を勧めるが、専門医が正しい診断や治療ができるかが問題だ。

   「客観的な診断手法や基準がないため、精神科の病気は正しい診断が期待できない」と米田さん。相模原市で16年に起きた多数殺害事件の被告は 4人の精神科医から 7つの異なる病名をつけられていた。また、多剤大量療法や睡眠薬・抗不安薬など薬の使用法、安易な拘束や暴力など不適切な治療がまだまだ多いという。

   精神病院の長期入院・隔離が批判され、それに応じて診療報酬も変わってきた。長期入院より精神科救急が利益を生むようになったことから、精神病院は入退院をくり返す「回転ドア型」にシフトしつつある。それにつれ身体拘束が 2倍に増え、早期の死亡退院が急増している。

   「精神障害者は凶悪犯よりも人権が保障されていない」と米田さん。 1人の精神保健指定医の判断で強制的に拘束、入院できるからだ。親族や配偶者が精神保健指定医を動かし不当に入院されたと認める判決が東京や大阪で出ている。鹿児島では指定医が何人もの女性患者に性的関係を求め、少なくとも 2人が自殺した。また、多数の精神科医師が条件をごまかして指定医資格を得ていたことが聖マリアンナ医大などで発覚した。米田さんは「国民を守るには医師の裁量権に規制が必要」と訴えた。

心を病む子供たちも薬漬け

   中川さんは「回転ドア型で患者は治らず、増える一方だ」と各種データから精神科医療の実態を報告した。97年は 9万 7千人だった「精神障害者福祉手帳」交付者は12年には69万 6千人と 7倍に増えた。

   公立学校教諭の休職者は、84年から2011年までは精神疾患以外の理由は年 3千人程度でほぼ一定なのに、精神疾患は 1千人から 5千人に増えた。しかもそのうち 1千人が退職、新たに 1千人が休職している。職場のストレスチエックで、ちょっとした不眠、不安、不調を訴えると精神科を紹介され、睡眠薬や抗不安薬が処方される。真面目な患者はその薬のせいでうつ病に進み、さらに抗うつ剤や抗精神病薬を処方されているうちに統合失調症へ進む。薬が病気を作っており、薬を減らすと症状は改善する。

   こうした実態を指摘しつつ、中川さんは不適切治療の典型として「子どもの発達障害」(ADHD)を挙げた。13歳から18歳への処方は08~10年は02~04年に比べて、抗精神病薬、抗うつ病薬が 4割増、ADHD薬が2.5 倍に増えている。しかも、米国は19%、ドイツは 6%とされる多剤併用が 6割以上を占める。「こんなことをしているのは日本だけ。親も教師も上司も医師任せ。日本人の医師信仰、薬信仰が背景にある」と、中川さん。

   全国オルタナティブ協議会は、改善のための啓発活動「自分で決める! 薬を飲む飲まないキャンペーン」を始めている。

(医療ジャーナリスト・田辺功)

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