心を病む子供たちも薬漬け
中川さんは「回転ドア型で患者は治らず、増える一方だ」と各種データから精神科医療の実態を報告した。97年は 9万 7千人だった「精神障害者福祉手帳」交付者は12年には69万 6千人と 7倍に増えた。
公立学校教諭の休職者は、84年から2011年までは精神疾患以外の理由は年 3千人程度でほぼ一定なのに、精神疾患は 1千人から 5千人に増えた。しかもそのうち 1千人が退職、新たに 1千人が休職している。職場のストレスチエックで、ちょっとした不眠、不安、不調を訴えると精神科を紹介され、睡眠薬や抗不安薬が処方される。真面目な患者はその薬のせいでうつ病に進み、さらに抗うつ剤や抗精神病薬を処方されているうちに統合失調症へ進む。薬が病気を作っており、薬を減らすと症状は改善する。
こうした実態を指摘しつつ、中川さんは不適切治療の典型として「子どもの発達障害」(ADHD)を挙げた。13歳から18歳への処方は08~10年は02~04年に比べて、抗精神病薬、抗うつ病薬が 4割増、ADHD薬が2.5 倍に増えている。しかも、米国は19%、ドイツは 6%とされる多剤併用が 6割以上を占める。「こんなことをしているのは日本だけ。親も教師も上司も医師任せ。日本人の医師信仰、薬信仰が背景にある」と、中川さん。
全国オルタナティブ協議会は、改善のための啓発活動「自分で決める! 薬を飲む飲まないキャンペーン」を始めている。
(医療ジャーナリスト・田辺功)