政府の準天頂衛星が導く未来 期待広がる新ビジネスとは

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   日本版GPS(全地球測位システム)のへの期待が膨らんでいる。政府の準天頂衛星「みちびき」2号機の打ち上げが2017年6月1日に成功、同年中には4機体制になる計画で、18年度から位置情報の精度が飛躍的にアップし、新ビジネスが広がるという。

   みちびきのセールスポイントは、位置情報の精度が現在の10メートルから、6センチ以下まで高まること。

  • 自前のGPSでビジネスに光は差し込むのか(画像はイメージです)
    自前のGPSでビジネスに光は差し込むのか(画像はイメージです)
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「自前GPS」完成へ

   GPSは米国が軍事用に開発し、民生用に開放したもので、自動車の走行位置を確認するカーナビなどに利用されている。現在31機体制で世界中をカバーしているので、ある場所で利用できる(衛星からの電波を受信できる)のは6機程度で、しかも真上にいるとは限らない。このため、衛星がある位置が地平線や水平線に近いと、都会では電波がビルなどに遮られ、山間部では山の陰になるなど、精度が落ちる。

   これに対してみちびきは、「準天頂軌道」というように、ほぼ日本の真上(高度3万2000~4万キロ)にいると考えていいので、ビルや山の陰になりにくく、精度をアップできる。正確には日本上空から「8」の字を描く形でインドネシア~オーストラリアを回る軌道で、1機が概ね8時間、日本の真上にいる。このため、災害時の安否確認機能を持つ3号機(静止軌道を周回)を含め4機体制で24時間、日本全体をカバーできる。もちろん、GPSも一体で利用し、より精度を高める。

   みちびき1号機は2010年に打ち上げられ、これまで、実証実験を重ねてきた。18年からは4機体制で本格的に日本版GPSが稼働。27年までには7機体制に強化し、GPSに頼らなくても高精度を実現し、「自前GPS」を完成させるという。

   みちびきで最も期待される用途が車の自動運転だ。車線変更、対向車とのすれ違いには、現在のGPSでは不可能なセンチ単位の精度での車両位置の把握が必要だ。農地での実験では、無人トラクターが40センチ間隔で植えた稲の間を、稲を踏まずに動くことに成功しているという。農作業の省力化は後継者難の対策に効果が役立つ可能性がある。

   小型無人機ドローンを使った物資輸送にも活用できそうで、離島や山間部などの「買い物難民」の解消に役立ちそうだ。

「輸出」も目指す

   スポーツ分野も有望視され、登山などの安全性の向上のほか、GPSを使って記録した走行データをもとにしたペース配分やトレーニングメニューの研究、サッカー、ラグビーやテニスなどで選手の動きのデータをもとにした戦術の検討や最適な靴など用具の選択等々、大きな可能性があるといわれる。

   さらに、政府はみちびきが上空を飛行するアジア、オーストラリアなどへの「輸出」も目指しており、タイやベトナムなどの交通渋滞の緩和を目指した交通管制への活用などのアイデアがある。アジア展開を目指した新会社設立の準備が進んでいて、既に20基を打ち上げてアジアでの売り込みで先行する中国を、官民挙げて、「高精度」で追い上げる考えだ。

   ただし、課題も多い。まず、受信機器の普及。みちびきの信号の受信には専用の端末が必要で、アップル社のスマートフォン「iPhone(アイフォーン)7」など対応機種はまだ一部。こうした個人向けの機器では、搭載する受信機の小型化と低価格化が不可欠だ。

   システムを維持するためのコストも巨額だ。2017年中に4機態勢にするためにかかる費用は約2850億円。1号機は20年に耐用年数を迎えるため更新が必要なほか、7機にするにはさらに巨費がかかる。こうした費用に見合う効果を上げるためには、生活や産業の幅広い分野で、より画期的な使い方を生み出せるかがカギになりそうだ。

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