「輸出」も目指す
スポーツ分野も有望視され、登山などの安全性の向上のほか、GPSを使って記録した走行データをもとにしたペース配分やトレーニングメニューの研究、サッカー、ラグビーやテニスなどで選手の動きのデータをもとにした戦術の検討や最適な靴など用具の選択等々、大きな可能性があるといわれる。
さらに、政府はみちびきが上空を飛行するアジア、オーストラリアなどへの「輸出」も目指しており、タイやベトナムなどの交通渋滞の緩和を目指した交通管制への活用などのアイデアがある。アジア展開を目指した新会社設立の準備が進んでいて、既に20基を打ち上げてアジアでの売り込みで先行する中国を、官民挙げて、「高精度」で追い上げる考えだ。
ただし、課題も多い。まず、受信機器の普及。みちびきの信号の受信には専用の端末が必要で、アップル社のスマートフォン「iPhone(アイフォーン)7」など対応機種はまだ一部。こうした個人向けの機器では、搭載する受信機の小型化と低価格化が不可欠だ。
システムを維持するためのコストも巨額だ。2017年中に4機態勢にするためにかかる費用は約2850億円。1号機は20年に耐用年数を迎えるため更新が必要なほか、7機にするにはさらに巨費がかかる。こうした費用に見合う効果を上げるためには、生活や産業の幅広い分野で、より画期的な使い方を生み出せるかがカギになりそうだ。