梅雨が明けると本格的に暑い季節がやってくる。人間の熱中症が話題になるが、犬や猫などペットの熱中症も心配だ。
毛皮を着ている犬や猫は、人間のように汗をかくことができず、熱を体外に逃がすことが苦手だ。毎年この季節には多くのペットが熱中症で動物病院に運ばれる。どうしたら「家族」の命を守ることができるか。
「クーラーをかけていたのに愛犬がぐったり」
ペットの熱中症といえば、2012年8月、日本テレビの朝の情報番組「ZIP!」に出演、人気となっていた2匹の兄弟犬「ZIPPEI(ジッペイ)」が熱中症で急死したことが日本中の涙を誘った。ジッペイ兄弟の飼い主が兄弟とほかの犬を車に乗せて外出。暑さを避けるため日陰の駐車場に車を止め、エアコンをつけた状態で車から離れた。約1時間後、車に戻るとエアコンが停止していた。乗っていた9頭のうち兄弟を含む7頭が死んでいた。J-CASTニュースでも2012年8月10日付「人気犬ジッペイ熱中症で急死 『せつなすぎる』と追悼の声が殺到」(https://www.j-cast.com/2012/08/10142558.html?guid=on)で報道した。
ペット保険大手のアニコム損害保険では、ウェブサイトの中で「STOP熱中症」のコーナーを設け、「STOP熱中症新聞」を第5号まで出し、飼い主に注意を呼びかけている。それによると、アニコムに寄せられる熱中症の保険金請求件数は毎年6月から急増、7~8月にピークを迎え、それぞれ300件近くに達するという。
「STOP熱中症新聞」から、犬の熱中症予防の方法をまとめると――。アニコムが熱中症で通院した契約者(飼い主)からインタビューした調査によると、熱中症を起こした場所は「自宅」が67%、「屋外」が33%で、家の中の方が危険なのだ。犬だけで留守番をし、飼い主が帰ってきたらグッタリしていたというケースが多い。
「その日は暑かったのでクーラーをかけていたものの、日当たりの良いリビングには効いていなかった。夜8時に帰宅すると、もうろうとして動けなくなっていた。そのまま20日間入院」
「暑い日が続いたため、少し前から元気がなかった。その日は朝からおう吐・下痢をして、散歩から帰宅しても食欲がないため、動物病院で点滴を受け、翌日も通院した」
犬が熱中症になると、次のような症状が表れるという。
(1)浅くて早い呼吸(ヘッヘッヘッヘッ)が続いている。
(2)体が熱く、よだれをいつも以上に流す。
(3)おう吐や下痢。
(4)ぐったりして起き上がれない。
(5)意識を失ってけいれんを起こす(重篤な場合は死亡することも!)。
バンダナやウエアを水に濡らし冷やす
そこで、まず家の中では次のことに注意するよう呼びかけている。
(1)家の中ではクーラーを徹底してかける。
(2)飲み水を絶やさないよう気を付ける。
(3)留守番時には日陰の部屋に移動させておく。
(4)アイスクリームやシャーベットなどの冷たいおやつをあげる。
(5)熱中症対策グッズも上手に利用する。クールマットやクールシートを床に置く。また、バンダナを水に濡らして首の周りに巻いたり、ウエアを濡らして着せたりすると体を効果的に冷やすことができる。
暑い夏はしっかり準備して散歩に出かけたい。注意点は次のとおり。
(1)散歩はできるだけ涼しい早朝に。日中は人間には約30度前後の気温(顔付近の高さ)でも、地面は約50度になり、犬の足の肉球がヤケドする。小型犬の頭部あたり(地面から30センチ)は約40度の高温になる。
(2)散歩には熱中症対策グッズを持参する。クールタオル(水で濡らしアイスノンで冷やす)やウエットシートで体を拭いたり、クールスプレーを使用したりする。
(3)ウエアのポケットに保冷剤を入れておくのもいい。
(4)必ず水筒(ペットボトル)と給水コップを持ち歩く。
猫には逃げ場になる涼しい場所を用意しよう
さて、猫の場合はどうなのか。ペット保険大手のアイペット損害保険が運営する獣医監修の猫情報サイト「にゃんペディア」では、「本当は恐い猫の熱中症」の中で東京猫医療センター院長の服部幸氏がこう解説している(要約抜粋)。
猫は汗を出すことができる場所が肉球だけだ。犬のように舌を出して熱を逃がすこともできないので、呼吸による体温調節も苦手。だから、室内猫は犬より熱中症になりやすい。猫の熱中症の症状も犬とよく似ている。症状が出たらどうしたらよいか。服部院長は、猫の体温を下げる応急手当をしながら、動物病院に電話で相談しつつ指示を仰ぐことを勧める。主な対処法は次の3つだ。
(1)体温を下げる:水で濡らしたタオル、またはアイスノンを布でくるんだものを脇の下や太ももの間に挟ませる。大きな血管が流れている場所のため効率よく体温を下げられる。濡らしたタオルを体にかけ、上から流水を当て続ける方法もある。ただし、体温が下がりすぎると、低体温症で命を落とす危険があるため氷水は決して使用しない。
(2)水を飲ませる:脱水症状になっているので、水を少しずつゆっくりと飲ませる。しかし、自力で飲むことが出来ない場合は無理をせずすぐに動物病院に行く。無理に飲ませると、肺に水が入り、肺炎を引き起こす恐れがある。
(3)動物病院に連れて行く:熱中症の症状が現れてから30~60分以内に適切な手当をしないと危険だ。いつ倒れたかわからない場合は、上の2ステップを飛ばし真っ先に動物病院に連れて行く。
そして、暑い季節を迎えた現在、予防には次の点に気をつけたい。
(1)気温と湿度を適度に保つ:エアコンをドライか冷房設定にし、温度は28度を超えない設定で。猫がエアコンを嫌がる場合は、高窓を開けたり、換気扇をつけたりして風の流れをつくる。
(2)猫に快適な場所を作る:猫は涼しい場所を勝手に見つけるので、逃げ場所となる涼しい場所を作っておく。日陰の部屋や、浴槽から水を抜いた風呂場を開けておくなどの空間を用意しておく。熱中症対策グッズのクールシートやクールマットを置くこともオススメ。
(3)水をたっぷり用意:ひっくり返す場合や蒸発する場合があるので、水飲み場は3つ以上用意しておく。
(4)一緒に出かける際の注意:キャリーケースで運ぶ時は、濡れたタオルを用意し、体を時々拭いてあげる。キャリーケースにタオルやペットシーツなどで包んだ保冷剤を一緒に入れることも1つの方法だ。
最後に、熱中症にかかりやすい猫の特徴として、「ペルシャなど鼻のつまった短頭種の猫はスムーズな呼吸がしづらい。また、太っている猫や老猫、子猫は体温調節が上手くできないので、特に注意が必要です」と呼びかけている。