国の病院の調査で、入院患者に処方された抗生物質のうち20%が不要である可能性が報告された。また、処方抗生物質による副作用で入院の延長や再入院を余儀なくされているケースも少なからずあった。
調査にあたった医師らは、臨床医らに注意を促す一方、患者側にもリスクの理解に努めるよう要請している。
米病院で調査
調査を行ったのは、米ボルティモアにあるジョンズ・ホプキンズ病院の医師らの研究グループ。2017年6月12日付で米医師会の内科医学誌に論文を寄せ、結果を報告した。
ジョンズ・ホプキンズ病院はジョンズ・ホプキンズ大学医学部付属で生物医学研究施設を併設。世界で最もすぐれた病院として知られ、大学など研究施設のランキングで知られるニュース誌で、11年まで21年連続で全米一の病院とされた。
研究グループは、13年9月から14年6月までの間に同病院に入院した1488人の成人患者の電子記録を審査。患者らの入院の理由は、負傷から慢性的疾患と幅広いが、いずれも、少なくとも24時間にわたって、抗生薬による治療を受けていた。調査では、患者の退院後30日間の記録を追跡し、抗生物質に対する拒絶反応や副作用の発生確率を確認。また、不要な抗生物質をカットすることで避けられた可能性がある副作用の件数を割り出した。
それによると、患者のうち5人に1人がなんらかの副作用の症状がみられ、また、副作用の疾患のうち5分の1は、抗生物質が不要な患者に起こっていた。
6割以上が追加の検査必要に
患者数からみた副作用の発生率は20%だったが、1人が2つ以上の症状を経験しているケースも少なくなかったという。抗生物質の投与期間10日間ごとに副作用のリスクが3%上昇。発生箇所は胃部42%、腎臓24%のほか、血液の異常15%だった。患者の4%で、抗菌物質の使用による感染率上昇が知られるクロストリジウム-ディフィシル腸炎の発症がみられ、同6%が多剤耐性の感染症にかかっていた。
入院期間への影響をみると、24%の患者が副作用のため延長を余儀なくされ、3%が退院後に再入院。また9%は病院の救急処置室で治療や別のクリニックでの診療を受けた。61%が追加の検査を必要になった。
研究グループの調べによると、19%の患者は抗生物質の処方が不要だった。同病院の小児科学准教授で「小児科抗菌物質適正使用支援プログラム」のディレクターを務めるプラニタ・タマ医師は「医者はしばしば抗生物質をだしたがる。細菌感染の疑いが低くても。必要でなくても、害にもたぶんならないだろうと考えている」と指摘。「現実には害になる可能性がある。抗生物質処方の際にはいつも、ちょっと待てと問いかける。この患者に本当に必要なのかと」
タマ医師は、この研究報告をきっかけに、医師側が処方に対する意識を高めることを要望。また、患者らにも、薬の副作用の可能性について医師に質問を重ねて理解を深めるようアドバイスする。医師と患者らが意識を高めることが、不要な処方を大幅に減らす原動力になるという。