子どもの食べ物アレルギーの中でも最も多い卵アレルギー。日本小児アレルギー学会は2017年6月16日、離乳食を始めるころの生後6か月から少量ずつ卵を食べさせると、卵アレルギーの発症予防になるという提言を発表した。
これまでのアレルギーを起こしやすい食品は食べる時期をできるだけ遅らせた方がいいとの考え方を180度転換した。医師の管理下で少しずつ慣らしていくというが、大丈夫なのだろうか。
卵を早くから食べさせるとアレルギーが80%減る研究
卵アレルギーは、乳幼児の食物アレルギーの中で最も多く、有症率は10%といわれる。卵を口にした場合、湿疹や頭痛、吐き気などの症状が起こり、ひどい場合は呼吸困難に陥ることがある。今回の提言は、小児科医やアレルギー専門医など医療関係者向けに出されたものだ。同学会のホームページに掲載された「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」によると、最近発表された国内外5つの研究成果を踏まえた。
その1つが、国立成育医療研究センターが2016年12月9日に発表した、アトピー性皮膚炎の赤ちゃんを対象にした研究だ。それによると、「アトピー性皮膚炎の赤ちゃんは卵アレルギーになりやすいが、生後6か月からゆで卵を少しずつ食べさせると、卵アレルギーの発症を80%抑えられる」というもの。研究チームは、生後まもなくアトピー性皮膚炎になった赤ちゃん121人を次の2つのグループに分け、アレルギーの発症リスクを調べた。
(1)生後6か月からゆで卵とカボチャの粉末を毎日食べる60人。卵の量を段階的に増やした。
(2)生後6か月~1歳まで卵を食べず、カボチャの粉末を毎日食べる61人。
そして1歳になった時点で卵アレルギーを調べた結果、卵を食べた60人のうち、卵アレルギーを発症したのは5人(8%)だったが、カボチャだけを食べた61人のうち23人(38%)が発症した。これは、卵を食べることで発症を80%抑えたことになる。少しずつ卵を食べて耐性がついたと考えられる。研究チームでは、発表資料の中で「予想を超える大差で、生後6か月ごろから少量ずつ食べ始めたほうがよい結果になることがわかった」とコメントしている。
自己流は危険、絶対に医師の指導のもとで
今回の学会の提言のポイントは次のとおりだ。
(1)対象は、かゆみのある湿疹をともなう「アトピー性皮膚炎」のある乳児で、湿疹のない乳児は生後5~6か月から離乳食を与える一般的な進め方でよい。
(2)湿疹のある乳児は、必ず専門医を受診し、アトピー性皮膚炎であるかどうか診察を受ける。そして、医師から湿疹の治療を受けたうえで、卵の摂取を進める。
(3)生後6か月からMサイズの固ゆで卵を粉末にし、毎日0.2グラム(1個の100分の1程度)の量を3か月間食べる。それから次第に量を増やしていき、1歳児になったら卵半分の量を食べる。それでも皮膚に湿疹ができないことが目安になる。
(4)以上のことは必ず医師の指導、管理の元で行なう。家庭で自己流に卵を食べさせるのは非常に危険だから絶対にしてはいけない。また、途中で湿疹が出たらすぐにやめる。
(5)すでに「卵アレルギー」が疑われる症状が出ている乳児は、安易に卵を食べさせることは極めて危険なので、専門医は「食物アレルギー診療ガイドライン2016」に従って対応する。
大事なことは、自己流で勝手に卵を食べさせずに、必ず医師の診療と指導を受けることだ。
かつては、アレルギーを起こしやすい乳児は、危ない食品はなるべく遅くまで避けた方がいいと考えられてきた。最近は、食べる時期を遅らせると体が慣れず、発症リスクをかえって高めることが分かってきた。ピーナッツアレルギーも同様の研究が相次ぎ、米国立衛生研究所は2017年1月、ピーナッツアレルギーの発症予防のために、発症の恐れが高い子も含めて乳児に早期にピーナッツ食品を与えるように推奨する新しいガイドラインを発表している。
ただし、このガイドラインについて日本アレルギー学会は「我が国では離乳早期にピーナッツを摂取すべきかどうかはこれからの研究課題」という慎重な姿勢を学会ホームページに掲載している。