「ブ~ン、チクッ!」。イヤ~な蚊の季節がやってきた。嫌われ者代表の蚊だが、何と犯人を突きとめる犯罪捜査に役立てる研究が発表された。
夏場の屋外の犯罪現場には蚊がよく飛んでおり、犯人の血を吸っている可能性が非常に高い。その蚊から血液を採取し、DNA鑑定によって犯人を特定できるばかりか、犯罪現場にいた時間まで推定できるというのだ。
犯罪現場には血ぶくれした蚊がよく飛んでいる
この画期的な研究をまとめたのは、名古屋大学大学院医学系研究科の石井晃教授らのチームだ。米科学誌「PLOS ONE」(電子版)の2017年6月15日号に発表した。名古屋大学の発表資料によると、夏場の屋外の犯罪現場、たとえば森林などの遺体遺棄現場などでは、吸血して膨らんだ蚊がよく見かけられる。これらの蚊は犯人や被害者、犯罪に関係した人の血を吸っている可能性が非常に高い。
現場で飛んでいる生きた蚊の血液を採取すれば犯人の特定に役立つため、国際的にも蚊から採取した血液でDNA型を判定する研究が進められてきた。しかし、そのためには人間の血を吸ったことがなく、細菌などの感染歴のない蚊を大量に集め、系統的に人間に血を吸わせる実験を行なう必要がある。その蚊を集めることがネックになっていた。
研究チームは、殺虫剤の開発のために無菌に近い状態で蚊を飼育している大日本除虫菊中央研究所の協力を得た。そして、7人の被験者に飼育された蚊(アカイエカとヒトスジシマカ)に十分血を吸わせ、吸血した蚊からDNAを抽出して個人を識別することが可能か、また、蚊が吸血してからどのくらいの時間が経過するまで個人識別が可能か調べた。蚊は血を吸うと約72時間で血液をすべて消化し卵巣を成熟させてしまうからだ。